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プロフィール

1975年生、東京大学教育学部卒業。99年インフォプラント(現マクロミル)入社、2002年同社取締役就任、インフォプラント退任後、06年インドや中国等の新興国進出支援を目的としたインフォブリッジ社を設立。インド・ニューデリー在住。インドを中心に日系企業のインド進出をマーケティング視点からサポート。市場調査、マーケティングプランの策定、コンサルティング等を行う。

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インド市場への参入障壁とはなんだろう

投稿日時:2013/05/16 17:34

日系企業にとってのインド市場進出の手伝いをしている中で、兎にも角にもインド市場というのは難解であり、日系企業での成功事例が少ないという話を多数聞く。確かに、現状でインドで成功している日系企業はどこか?という問いに対しては、マルチスズキやホンダの二輪などが挙げられると思うが、スズキは80年代から進出し、既に30年近くをインド市場とともにある。ホンダも同様だ。そういった意味では、長い歴史を持つ企業のみの成功事例というkことしか現状はないのかもしれない。

 そもそもなぜインド市場が日系企業にとって難しいのか、というのを考えてみると、人種や民族、宗教、言語の違いや広大な国土を持つが故の気候の違い、所得格差があることが前提であり、一概に「インド人」といっても生活レベルも教育、知識のレベルも異なるいわゆる「多様性に満ちた」社会を、単一尺度でモノを見がちである日系企業から見た時の理解の難しさというところがある。

 また、理解が難しいというところだけではない。デパートやハイパーマーケット、スーパーマーケットといったいわゆるチェーン系のリテールも数が限られており、市場の多くがパパママストアで占められており、営業攻略の難しさという所も指摘される。

 では、そのパパママストアを攻めればいいではないか、と思うが単にそれらの店舗に対して営業をかけるだけではなく、倉庫の置き方、物流のさせ方、代金回収の仕方、それらに関わるディストリビューターの使い方、等チャネル政策も極めて複雑である。

 しかしながら、理解の難しさやチャネル政策の煩雑さというものがインド市場への参入障壁なのだろうか? 確かにこれら二つが参入の妨げになっているという指摘は正しいのだが最大の参入障壁は実は他にあるのでは、と最近思う。

 インドで既に顕在化しているカテゴリに市場参入をしようとすれば、競争相手はインド地場の会社だけではなく、世界中どこでも見かけるようなグローバルガリバーとの競争が待ち受けている。日用消費財であればユニリーバやP&Gといったグローバルプレーヤーにさらに地場の大手企業、食品であればネスレもインド市場に大々的に投資している。家電を見れば、韓国のサムスン、LGも幅を利かせる。

 こういったグローバルレベルで強い競合が既に現地でシェアを持っていることを考えると、市場理解やディストリビューション網の整備といった所は着実に時間をかけて整備したとしても、競合の強さ、目立った新規参入組が出てきたときの競合の一歩先を打つ手、という所が実は一番のやりづらさを持つところなのではないか、と。

 そうなってくると、既に市場進出をしている強い競合と同じ目線だけで戦うという選択肢を持つのではなく、彼らが未だ展開していない新規カテゴリの創出を考えるということが、今後インド市場にうって出ようとする日系企業にとっては重要なのだろう。

日系企業にとっての最近のインド市場

投稿日時:2013/04/25 18:43

 日系企業がインド進出を加速しだしたのは2008年のリーマンショックを皮切りとし、その後、中国での反日運動がしばし起きる中で、インド市場をネクストチャイナ、巨大な中国市場の次の市場としてインド市場に期待がもたれた。

 日本においても、新聞や雑誌等のメディアでインド市場への期待を取り上げられることも多く、一見日系企業のインド進出は大ブームを迎えているようにも見えた時期もあった。しかしながら、実態から見てみると、さほど大きなブームが到来しているようには残念ながら見えない。

 2012年度(インドの会計年度は4月-3月)のインド経済は「新興国であるのだから7~8%の経済成長をしてくれるものだ」というある種の期待を裏切り、5%代前半と低迷した。こういった中で、ただでさえ「インド市場は難解である」とか「インドは難しい」と嘆いていた日系企業の動きは積極的ではないように見受けられる。

 日系企業、特に現在既にインドに進出している日系企業の9割以上はいわゆる名の知れた大企業である。しかしながら、大企業の中でも中国やASEANのように一通りまあ進出がなされているという状況ではなく、まだ限られた存在だけがインドに進出しているというような状況だ。

 インド市場が注目を集め、その後一度市場視察に足を運んだ企業はかなりの数に上るが、難解で攻略の難しい市場ということで、中期経営計画に名前は載るものの、実際の活動としては優先順位がさほど高くないという状況が実際には続いているというのが現状でもある。インド市場が大きくなることは分かった、将来的なポテンシャルもある、というのが共通の認識ではありつつも目前の色々な意味でのハードルの高さというのに尻込みしているという状況だろうか。

 しかし、この1年程で潮目が変わりつつあるように感じるのも事実だ。以前は「難しい、よって先延ばし」という企業が多かった一方で、「難しいのは事実だが、必ずやらねばならない市場」というようにインド市場の置かれ方は変わってきているようだ。

 2030年にインド市場は世界最大の消費市場になるという予測もある中で2030年まではあとたった17年しかない。17年という歳月は、短すぎるわけでも長すぎるわけでもないだろう。確かに出遅れた感が見える日系企業のインド展開ではあるものの、2030年の世界最大市場というマップを見る中で、ここから5年、10年、15年でどういった展開を取っていくのか、そんな視点もあってよいのではと思う。

海外で商売するにあたって重要なポイントとはなんだろう

投稿日時:2013/04/11 17:51

 2004年に東京から上海に拠点を移し、そろそろ10年が経とうとしている。社会人になって以降、日本で仕事をしているよりも、海外で仕事をしている方が圧倒的に長くなってきた。そんな環境の中で、最近よくインドに視察や商談に来た方に聞かれることが「海外でビジネスをしようとしたときに何が大事なんでしょう?」ということ。

 やれ英語だ、やれその国のナショナルスタッフとの関係性だとか、色々なことを言われるし、色々な視点はあるのかもしれないがまずは大きく次の3つなのではないかなと最近感じている。

1) 事前調査とシミュレーション

 基本的に、社会構造、市場構造、顧客構造が瓜二つな市場というのはほぼないというところからすれば、やはり過去の経験とは異なる中に身を置くこととなる。まずはしっかり市場やターゲット、競合を見据えることが重要。一方で、調査だから、といって情報をこねくりまわす必要も、あえて複雑なモデルを構築する必要もなく、シンプルにその市場を捉えること、を考えるべきだ。

 また、その情報をもとに、まずはわからないなりにでも、どのようにビジネスを進めていくとよいのか、その際にどのようなことが起きえるのか、といったことをいろんな角度からシミュレーションしてみる。

 よく、「インドのこと知らないので」とか「海外のことよくわからないんです」という声が聞かれるが、海外に来たらいきなり全くもって理解不能なモノが飛んでくるわけではない。仮に過去の経験と異なることが出てこようが、全くもって想像力も働かなければ企画は進まない。

 さらに、「ダイバーシティ」や「違い」といったことがことさら強調されがちなところはあるものの、違いを丹念に追っていくよりも、最大公約数的共通点はいったいどこにあるのか、といった所を考えていくことの方が大事でもある。

2) 市場や顧客をちゃんと意識する

 海外市場に出るにあたって、「自社の強みを活かさねばならない」ということで日本市場や過去経験を持つ市場での体験や事例にこだわりたくなる気持ちもわからなくはない。また、よく言われるように企業の論理、というのも確かに存在するのも事実なのだろう。

 しかしながら、自社の商品やサービスに対して対価を払ってくれるのは誰なのかを考えた時に「自分」だけを中心にモノを見ていくのはいったいどうなんだろうか。その国、そのエリアの市場、顧客といったものを中核に、彼らが顕在的・潜在的に求めるモノに対して自社の強みをはめていくという事をもう少し考えるべきではと感じることが極めて多い。

3) 当たり前のことを当たり前にやる

 実は3点目のここが最も大事なポイントだと感じる。海外だから突拍子もないようなことを考えたり、目立つような企画をしたり、派手なことをしなければならないという事は全くない。

 一見目立つように見えるのかもしれないが、実際の日々の活動というのは思っている以上に地味だと思う。特に文化や習慣が異なるチームと相まって活動をしていくにあたっては、日本以上に日々の会話やチームの動きに目を配る必要もある。

 当たり前のことを当たり前に粛々と繰り返し続けること、ここをやりきれるかやりきれないか、2年、3年と時間が経過していったときに最も大きな差がつくポイントなのではないかと思う。

 勿論、地道に当たり前のことを当たり前にやるという事は時として極めてストレスフルなことであることも事実だと思いますけどね。

モンスーンとインド経済

投稿日時:2012/10/16 17:14

 皆さんはモンスーンについてご存知だろうか。インドを含むアジアの広い地域に吹く季節風の事で、特に6月から9月にかけて海側から大陸方向へ吹く湿った風が、インドに雨期をもたらす。このモンスーンがインドの景気に大きな影響を与える重要な意味を持っていることはあまり知られていないのでは無いだろうか。

 毎年、モンスーンとそれがもたらす降水量に最も振り回されているのが農業関係者だろう。インドは国民の7割近くが農業に従事し、GDPの2割程度を占める農業大国である。雨期にモンスーンが運んでくる雨量が大きく農業生産を左右するのだ。今年6月、7月はモンスーンによる降水量が例年を下回り、8月に出荷時期を迎えたトマトを始めとする野菜の市場価格が高騰している。ただでさえ長期に渡るインフレに苦しむインド経済に更なる打撃を与えた格好だ。8月は例年を若干上回る降水量を記録し、最悪の事態は避けられたようだが、完全に回復するのは難しそうだ。

 モンスーンが与える影響は農業だけにとどまらない。農作物の不作はそのまま農民の収入を減らし、消費の伸び悩みへと繋がる。今年も既に白物家電の売上に影響が出ている模様だ。家電業界は長引くインフレやルピー安の影響で製造コストが増加しているため、家電の販売価格が上昇している。そのため都市部での売り上げが伸び悩んでおり、その不振を補うことが期待される農村部でも、農作物の不振で景気が悪くなることが予想され、消費の伸びが抑制される恐れがある。家電量販業界のまとめによると、今年に入ってからこれまでのエアコンと冷蔵庫の販売台数は前年同期を30%下回っているという。

一方で、8月に急に振り出した雨は、各地で洪水を引き起こしており、別の形で経済に影響を与えている。8月の中旬には大雨の影響で北インドおよび東インドの各地で洪水が発生し、土砂崩れなどの被害で12人が死亡したと報じられた。このような被害は毎年のように発生しており、降ったら降ったで別の問題が起こるのだ。

 モンスーンが毎年の景気に影響を与えることは、ある意味わかりきったことなので、本来は政府主導でその影響の振れ幅を小さくする対策を講じるべきところだが、財政難にあえぐインド政府にとって、灌漑設備の整備や治水などの対策を迅速に進める余力が無いのも事実だろう。

 インド経済のモンスーンに左右される傾向は、当面続きそうである。

IT大国インドだけど、いまだ伸び盛りの新聞

投稿日時:2012/09/27 10:28

 インターネットメディアの隆盛と、苦戦を強いられ変革が求められる既存マスメディアという構図は、西洋諸国では概ね共通している状況だと思う。ここインドでも、インターネットメディアの動向は当然注目されている。しかしながら、インドにおける既存マスメディアの有り様は、西洋諸国のそれとは若干異なる。特に新聞業界は他国の新聞関係者が羨む”成長産業”である。

 インドは有料日刊紙の発行部数で世界一を誇る新聞大国だ。市場規模は2005年から2010年の5年間に1.7倍に成長しており、今後も年10%のペースで成長すると予測されている。インドの新聞は価格が非常に安いため、例えばミドルクラスの家庭でも複数の新聞を購読することが出来る。生活が豊かになり、ある意味情報に飢えている人々にとって新聞は貴重な情報源になっている。

そのため、新聞は広告媒体としての価値が高く、新聞広告の売上は近年も堅調に伸びている。インドには無料のものも含めると約2800の新聞が存在すると言われるが、そのほとんどを占めるのが各都市や地域に存在するローカル新聞である。経済成長の恩恵が主要都市から徐々に地方都市に波及していく中で、各地のローカルビジネスによる広告需要が伸び、新聞業界全体の広告収入を押し上げているのだ。ここ数年では全国紙もこの好循環に着目しており、全国共通のページにプラスして各地方毎にローカルページを差し込んだ地方版の提供を強化する動きが目立っている。

 また、以前このコラムでも取り上げた識字率の問題も新聞業界の成長要因として語られている。識字率の低いインドではこれから字を読めるようになる人口が多いので、その層が新たな読者と成りうるからだ。それに加え、経済的な成長の割にインターネット普及のスピードが遅いため、まだ当面は新聞を始めとするプリントメディアの伸びしろが大きい事も新聞業界にとっては都合が良い。

 ”India’s Newspaper Revolution”の著者であるロビン・ジェフリーは、インドの新聞業界の成長が止まり、右肩下がりになるにはまだ10年から15年はかかるだろうと予測している。この人はその理由の一つとして「人口の大部分を占める中間層未満の人々にとって、新聞は読んだ後に様々な用途で再利用できるから」という珍説(?)を主張しており若干不安になるが、そのような副次的な要因も含めて、インドの新聞業界が当面右肩上がりである事は間違いなさそうだ。

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