社内の関係性を向上させるために~ワーキングウーマンのためのアドラー心理学

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2014/10/21  (1/4ページ)

<主な登場人物>

主人公 鈴木 美香(32歳):中堅メーカー勤務 就職氷河期を乗り越えて入社したこの会社で、10年間営業事務スタッフとして勤務してきた。控え目ながら真面目でコツコツ努力し、後輩の面倒見が良いところが評価され、半年前から「主任」の肩書がつき、いわゆるプレイング・マネージャーの立場でチームをまとめることになった。それまでの上司は温厚な委任タイプで、美香とも相性が良かった。しかし最近、人事異動があり、剛腕で強気なタイプの上司が新任の課長として着任した。

華子先輩(35歳):Cafe de Adler 店主 大学院修了後、臨床心理士として病院や学校に勤務していたが、途中でアメリカの心理学大学院へ留学。帰国後、同職の夫とカウンセリングルームを開設した。最近、長年の夢であった悩める人々の語り場としてのカフェをカウンセリングルームに併設して開店したばかり。華子にとって美香は大学時代の後輩で、妹のように可愛がり、何かと面倒を見ている存在。

◇メンターを「ママ」と呼ぶ新人

 鈴木美香が主任になってから8ヶ月が過ぎようとしていた頃、ひとりの新入社員(山本彩子・23歳)が配属された。美香は佐藤課長から、彩子のOJTトレーナーとメンターを任された。「鈴木さんもチームリーダーとの兼務で大変だと思うが、部下育成の経験も積んで欲しいと思う。期待してるよ」と課長から言われ、美香も嬉しくなって張り切っていた。

 彩子は素直でおっとりとした性格で、長女気質の美香にとっては、とてもかわいく思える存在であった。

 初日から美香は丁寧に仕事を教えた。彩子は一生懸命だが、あまり仕事の覚えが早い方ではなくケアレスミスも多い。しかし、質問はよくしてくるので、美香はそれがやる気の表れだと信じ、根気強く指導していた。何かと彩子に声をかけ、作業が遅いときは手伝い、細やかに面倒を見ていた。周囲が美香をからかって「美香ママ」と呼んだりすることもあり、二人の姿はまるで親子のようだった。

 トレーニング開始から3ヶ月、美香が研修で不在の日、彩子が重大なミスをした。顧客から急な発注数の変更に関する電話を受けた際、発注伝票に記入する数を、1桁少ない数字にして書いてしまった。美香はケアレスミスが多い彩子の対策として、発注や納期に関わることは、いつも彩子の個人メモ帳と照らし合わせて確認し、間違いは自分が訂正することにしていた。チームの部下にフォローを頼んでいたが、報連相がうまく機能しなかったらしい。

 当の本人の彩子は、関係部署に事情説明するときも美香の後ろに終始隠れるような状態で、あまり当事者意識がないように見えた。

 そして当然、このことは顧客からの大クレームとなったが、佐藤課長の対応で何とか一件落着した。夕方、佐藤課長は美香をデスクに呼んだ。美香は後悔の念にとらわれながら、課長に向き合った。

 課長「君は今回のことはどのように感じているのかな?」

 美香「申し訳ございません。私の責任です、私が悪いんです」

 課長「具体的に、どこが悪かったと感じているのか話してくれないか」

 美香「私が研修先から電話をして、山本さんにその日の出来事を報告してもらうべきでした。そして、発注伝票の記入は翌朝にでも私が行うべきでした」

 課長「鈴木さん、君が、か?本当にそう思うのか?」

 美香「はい…、私が責任者ですから」

 課長「以前、君と“責任と自覚”について対話したよね?その言葉をもう一度ここで思い出してくれないか?そして、気づいたことを話してくれ。明日までの宿題で構わないから」

 美香「はい、今は混乱していますが、今夜落ち着いて考えてみます」

 美香は退社後、足早に華子のカフェに向かった。

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