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上司は、相性の合わない部下を持つことがよくあります。一方、部下も相性の合わない上司に仕えることがあります。たいていの場合、相性の悪さは、お互いが認識しており、それは仕事に影響します。

上司と部下の相性は、人のタイプから生まれます。人にはタイプがあり、各々ツボが異なります。

部下指導のセオリー、ボスマネジメントのセオリーにしても、相手によってはうまくいきません。これもそれぞれのタイプに原因がある場合が多いもの。特にコミュニケーション系のセオリーは、相手のタイプにあわせてチューニングする必要があります。

今回は、上司と部下の相性をタイプの違いに注目して考えます。

上司の言い分

私の部下の中に、どうしても相性が合わない者がいます。消極的で行動力がなく、ネガティブな言動が目立ちます。会話もレスポンスが悪く、なにを言っても「難しい」と返してくる。なかなか本音を言わず、何を考えているのか分かりません。話すとイライラしますよ。

これまでも似たようなタイプがいました。そういうタイプとはいつもうまくいきません。私は部下に、指示を出したらグズグズせず、すぐに行動することを求めます。レスポンスよく本音で話すタイプの部下がいいですね。管理職だったら、誰でもそう思うんじゃないですか。

ただ、気になることはあります。以前私の部下で、考えるばかりで行動力がない者がいましたが、他の部署に行って上司が変わったら伸びました。やっぱり相性ってあるんですかね。

【部下に求めること】

*行動力を高めてほしい

*会話ではレスポンスよくしてほしい

*本音で話してほしい

部下の言い分

いまの上司とは相性が合わないみたいです。上司は、なんでも「すぐにやれ」と言います。でも、何も考えずにやっても失敗すると思います。着手する前に、予想できるリスクについてはしっかりと対策するなど、準備をした方がよいと思うのですが。

それに、なんでもすぐに返事を求めます。先日も急に「将来どんな方向に進みたいか」と聞かれました。そんなこと、急に言われても答えられません。上司の言う将来とはどのくらい先のことなのかもわかりませんし、方向と言われても漠然として答えにくいです。

企画書を作って見せても「パンチがない」とか「パっと見てわかるようにしろ」といった感覚的なことしか言いません。意見があるならもっと具体的に言ってほしいです。

上司は、なにも考えずに行動する部下の方が好きみたいです。僕はそういう仕事の仕方は嫌です。だから、いまの上司の下にいる間は評価が低いままだと思います。

【上司に求めること】

*きちんと準備する時間を与えてほしい

*即答を求めないでほしい

*指導は具体的にしてほしい

例に挙げた上司・部下のタイプは正反対。典型的な相性に問題のあるペアです。他の組み合わせも含め、相性を考えます。

<上司への提案>

相性の背景にはタイプがあります。今回は、4分割タイプ論のスタンダード、ソーシャルスタイルをベースに簡略化して解説します。まずは、次の中から、自分に近いタイプを見つけてください。そこには、相性の悪い部下タイプと、対処法が記載されています。

4つの上司タイプ

1.直感と行動タイプの上司

理屈より直感、考えるより行動という上司です。あまり席におらず、いつも飛び回っています。思いついたこと、言いたいことはすぐに話します。

*部下には論理性よりもやる気、熟慮よりレスポンスよく反応することを求めます。

*先ほどの例に挙げた上司はこのタイプ。部下にも同様にすることを求めます。

*相性が問題になるのは「考える人タイプの部下」

相性が問題になるのは正反対のタイプ(以下すべて同様)。いつまでも動かない部下にイライラしていることでしょう。

考える人タイプの部下を活かすには時間を与えること。予告する、宿題にするなどして、時間を与えるのがコツです。このタイプの部下は、直感と行動タイプの上司が苦手とする綿密な計画作りや細かいチェックを得意としています。

2.成果と効率タイプの上司

目的志向で、感情よりも合理性を重視します。成果にこだわり、目標を達成するためには、非情になることもしばしば。無駄な動きを嫌い、世間話は意味がないと考えます。

*部下には成果を求めます。また、事実を中心として、単刀直入に話すことを求めます。

*相性が問題になるのは「いい人タイプの部下」

気ばかり使って回り道をするこのタイプの部下は物足りないでしょう。いい人タイプの部下を活かすには、問いかけて意見を引き出すことが必要です。主体性を育てるためにも、問いかけてください。

このタイプの部下の強みは配慮性。成果と効率タイプの上司が苦手とするケア、サポート、フォローを得意としています。

3.いい人タイプの上司

*職場の和を重視し、争いごとを好みません。誰もが気持ちよく働けるよう、細やかに配慮します。部下の自主性を重んじ、あまり指示的なことは言いません。

*部下には、協調性を求めます。

*相性が問題になるのは「成果と効率タイプの部下」

成果はあげるものの、人の気持ちを考えないこのタイプの部下には違和感を抱くでしょう。また、正論で反論してくることに手を焼いているかもしれません。このタイプの部下を活かすには、求める成果を明示し、方法は任せるのがコツです。

このタイプの部下は、いい人タイプの上司が苦手とするハードなネゴシエーションを得意としています。

4.考える人タイプの上司

*計画や周到な準備を重視し、リスクに敏感で完璧主義の上司です。パソコンに向かっていることが多く、判断の前に、十分な情報を集めたいと考えます。

*部下には、きちんと計画すること、リスク対策をしっかりとすることを求めます。

*相性が問題になるのは「直感と行動タイプの部下」

何も考えずに行動してしまうこのタイプの部下を認めるのは難しいでしょう。このタイプの部下を活かすには、行動させることです。失敗したらやり直させればよいと割り切って行動させる方が、持ち味を発揮します。

このタイプの部下は、考える人タイプの上司が苦手とする、先が見えない状況の中での大胆な行動、初めての状況下での果敢なチャレンジを得意としています。

どのタイプの上司も、自分と同じタイプは使いやすいと考え、正反対のタイプは使いにくいと考えるもの。でも、自分とタイプの異なる部下を使いこなしてこそ一流の管理職。また、正反対のタイプは自分にはない強みを持っていますので、サブリーダーに登用する手もあります。

「自分だったらこうする」という指導から「このタイプはこう活かす」という指導に変えていきましょう。

*自分と異なるタイプの部下を認める

*各タイプにマッチした仕事を与える

*各タイプにマッチした指導をする

<部下への提案>

相性の背景にはタイプがあります。ソーシャルスタイル(上司への提案を参照)をベースに4タイプに分けて解説します。まずは、自分に近いタイプを見つけてください。そこには、相性の悪い上司タイプと、対処法が記載されています。

4つの部下タイプ

1.直感と行動タイプの部下

*理屈より直感、考えるより行動という部下です。パソコンの前に長時間座っているより、活動するのが好き。*長い話、細かい指示を嫌います。

*上司には「自由にさせてくれること」を望みます。

*相性が問題になるのは「考える人タイプの上司」

相性が問題になるのは正反対のタイプです(以下すべて同様)。話が長く、細かい上司に不満を募らせていることでしょう。考える人タイプの上司は即答が苦手。相談する前に予告する、考える時間を設けると待ち時間が少なくなります。また、口頭よりも文書を好むので、依頼事項はメモやメールでするとよいでしょう。

2.成果と効率タイプの部下

*目的がはっきりしていて、成果が明確に表れる仕事を好み、形式的なこと、効率の悪いことを嫌います。上司には「任せてくれること」を望みます。

*相性が問題になるのは「いい人タイプの上司」

このタイプの上司は、優柔不断で頼りなく見えるもの。そのタイプの上司に対しては、「決めてください」というより「こうしたいのですが、どうですか」と自分案を持って相談するのがポイントです。そうすれば、自分の望む方向で承認してくれます。

なお、このタイプの上司は力で押すと密かに恨みをためます。説得する際は、ソフトに話しましょう。

3.いい人タイプの部下

*ルールを守り、上司の指示に素直に従うタイプです。誰からも好かれることを理想とし、自分の気持ちより円満に収まることを重視します。上司には「丁寧に指示してくれること」を望みます。

*相性が問題になるのは「成果と効率タイプの上司」

剛腕タイプで、やたらと波風を立てる上司は悩みのタネです。このタイプの上司には、選択肢を示し判断を仰ぐのがコツです。「決めるのは私だ」という姿勢にあわせます。また、報告・連絡・相談は単刀直入に事実中心にするとよいでしょう。

4.考える人タイプの部下

*慎重で、時間をかけて考えるタイプの部下です。失敗すること、批判されることが嫌いで、リスクは最低限にしたいと考えます。

*上司には「じっくりと取り組ませてくれること」を望みます。

*相性が問題になるのは「直感と行動タイプの上司」

「部下への不満」「上司への不満」に出てきたペアがこの組み合わせ。うまくいかないのもわかります。

直感と行動タイプの上司に対しては、なにごとも「すぐに、ひとことで」言うのがコツです。分厚い資料は苦手ですから、大きなグラフ、写真一枚のようなもので説得するとよいでしょう。

正反対のタイプの上司は、自分にないものを持っています。これからマネージャーになっていく上では、貴重な教材です。「なぜ、そんなことを言うのか?」と考えてもストレスが溜まるだけ。タイプを理解し「やっぱりそうきたか。ならば」と対処できるようにしましょう。そのほうが生産的ですし、ビジネスライフが楽しくなります。

*上司のタイプを理解する

*正反対のタイプを教材と考える

*タイプにあわせて対処する

タイプが正反対の上司・部下は、お互いの弱みを補完し合えるゴールデンペアになりうる存在。認め合い、活かし合う関係にしていきましょう。

[2013年掲載の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

濱田秀彦(はまだ・ひでひこ)
株式会社ヒューマンテック代表取締役、マネジメントコンサルタント
1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て、大手人材開発会社に転職。トップセールスマンとなり、営業マネージャー、経営企画室マネージャー、システムソリューション部門責任者を歴任後、独立。現在は、コンサルタントとして、公開セミナー、個別企業の研修に出講しており、これまで指導したビジネスパーソンは1万7000人を超える。

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