本連載は会社員を経て現在はフリーランスとして活躍する中山マコト、立花岳志の両氏が、会社をやめても“食える人”であるための仕事力についてお伝えします。
この連載では、かつては企業・組織に属し、その卓越した“個”の力を磨き上げることによって、現在フリーランスとして活躍する人たちの考え方や行動から、「自在力」の身につけ方と磨き方を学んでいきます(自在力については連載第1回をご覧ください)。
今回は、自在力4「コミュニケーションを生む力」と自在力5「適正に判断できる力」について紹介していきます。
驚きを提供できる
ソリストに必須な能力の一つとして、“驚きを提供できる力”があると思います。
私が敬愛する小説家、今野敏(こんのびん)さんの作品のなかにこんなフレーズが登場します。
人間というのは怠惰(たいだ)だな生き物でしてな。一念発起したとしても、適当なところで妥協しようというおのれの誘いの声に引きずられそうになるものです。しかし、驚くことが人間を怠惰から救ってくれます。真の驚きを与える存在は人間を限りなく向上させるでしょう。
──今野敏『奏者水滸伝』講談社文庫
そう、驚くことが脳を活性化し、気分を高揚させます。そして印象に残ることにつながります。印象に残るということは、その印象をつくってくれた相手への思いも残るということ。これは、イザというときに自分のことを優先的に思い出してもらうための秘訣です。
「マインドシェア」と言いますが、相手の頭のなかに占める比率が大きくなるのです。
大手出版社を結婚を機会に退職し、サプライズ研究所という会社をつくった、袴田(はかまだ)玲子さんという方がいます。
彼女の志向は、サプライズを生み出すことです。もちろん良い意味でのサプライズですが、自分が関わる以上、ありきたりのアイデアでは納得せず、何が何でも相手や周囲をあっと言わせてしまう……そんな気概にあふれた仕事をします。
拙著『フリーで働く!と決めたら読む本』の発売前後、彼女の発案したいくつかのアイデアはこの本をベストセラーへと導く道標となりました。
サプライズというのは、その驚きの「効果」を最大に活かし、相手との関係を強化しようという作戦で、
「驚きを提供した人は忘れられない法則」
と私は呼んでいますが、これも自在力だと思うのです。
驚きを提供するには努力が必要です。適当に考えた程度では、どこかで見たような、誰かがやっていたようなものしか提供できず、真の驚きは生み出せません。
そうなると、その他大勢の一人となり、クライアントから指名されることもないのです。