【Web講座】梶原しげるの「プロのしゃべりのテクニック」

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2016/3/3  (1/4ページ)


自分は日本一下手なアナウンサーだと思え

 先日電車の先頭車両に飛び乗ったら、大きな声が聞こえてきた。ガラス戸越しに運転席を覗いたら、若い運転手さんが腕を振り上げ、大声をあげ、必死で運転レバーを握っていた。

 その様子をすぐ隣のパイプ椅子に座る<先輩>が厳しい眼差しで見守っている。

 「信号よーし!」「進路よーし!」「後方よーし!」……。まだ肌寒い季節だというのに、額から汗をダラダラ流しながら指差し呼称だ。

 新人がひたむきに頑張る姿は感動的だ。はるか昔、私にもそんな時代があった。ラジオ局の新人アナウンサーだった頃、大先輩からこんなことを言われたことを思い出す。

 「マイクに向かうまでは、自分は日本一下手なアナウンサーだと思え。いざマイクの前に立った時は、自分は日本一上手なアナウンサーだと思え」

 言われた時はあまりピンとこなかったが、時を経るに従ってこの言葉の重みを痛いほど感じることとなる。

 大先輩の意図はこういうことだったのだろう。

 「本番前の日々、自分は日本一下手くそなアナウンサーだから、どんな失敗が起きるかわからない。最悪のケースが起こり得ると、悲観的な立場で綿密に準備せよ」

 「しかしいざ本番のその瞬間は、悲観的な要素はすべて忘れ、自分は日本一のアナウンサーだから、絶対にうまくいくと、楽天的な態度で自由に語れ」

 「事前の準備は万一を考え用意周到に。その後の本番は気楽に力を抜いて」――。これはアナウンサーに限らず、プレゼン、会議や営業など、仕事全般における極意かもしれない。

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