ソーシャルビジネスが拓く新しい働き方と市場

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2013/1/22  (1/4ページ)

 ソーシャルビジネスは、社会問題という市場のないなかでビジネスを行います。

 そのため、社会起業家には事業をつくりながら、下記の4つを実現し、自ら市場をつくりだすことも同時に行なう必要があることを、前回、紹介しました。

(1)
顧客を生み出す
(2)
質と価格のスタンダードをつくり、分かち合う
(3)
自発的な協力を引き出し、費用以上の効果を得る
(4)
新しい課題解決法を広げ、ムーブメントをつくる

 今回は、産後女性の支援を事業として展開している「NPO法人マドレボニータ( 吉岡マコ代表 http://www.madrebonita.com/)」のケースを通して、社会起業家がどのように事業展開と市場創造を行っているのか、考えたいと思います。

産後女性らの心身のセルフケアを支えるマドレボニータ

マドレボニータの産後のボディケア&フィットネス教室の様子マドレボニータの産後のボディケア&フィットネス教室の様子

 マドレボニータは、「子育ての導入期」という最も不安定な時期にある女性の心と身体の健康をサポートに取り組んでいます。家族も社会も妊娠中の女性をいたわり、出産は皆で喜び合います。しかし、出産のお祝い時期を過ぎると、周囲のいたわりやサポートも減り、現代の核家族社会では、女性が一人で赤ちゃんを育てながら家事もこなすなかで余裕がなくなり、不安や孤立感も感じます。また、周囲から自分の名前ではなく「太郎くんママ」のように呼ばれ、赤ちゃん中心の暮らしが当然のように扱われることで、母親以外の自分自身が失われるように感じてしまう人もいます。そんな不安や違和感をもち、自分自身を否定することで「産後うつ」の状態に陥る人も少なくありません。

 そのような産後女性に対して、心身のセルフケアやコミュニケーションのサポートを、産後のボディケア&フィットネス教室を通して提供しているのが、マドレボニータの事業です。2012年には全国約40ヶ所の教室で、約3500人の産後女性らのサポートを行っています。

(1)顧客を生み出す

 マドレボニータの事業は、最初から、対象者である産後女性にも、社会にも理解された訳ではありません。

 産後女性へのサポートが足りないことに母親も気づきにくい「産後に赤ちゃん中心の暮らしになるのは当然で、新米ママは苦労するものだ」という社会通念があります。母子手帳にも母親の健康について記述する欄はなく、行政の保健センターなど公的機関では母子保健法に“母性又は乳幼児の健康のために”保健活動を行うと定めていることもあり、母親への心身ケアは提供されていません。そんな中で、産後女性自身も、子育てにストレスへの違和感は自分の母性が弱いためではないかと自分を疑ってしまいがちです。

 見落とされがちなのは、母親をめぐる社会環境の変化です。かつては、大家族の暮らしで、祖母らも含め、家族の多くが母親の子育てを支えていました。また、子供も数も多く、母親自身も幼少期から兄弟姉妹や親戚、近所の赤ちゃんの世話もして乳児の世話の経験を積んでいました。地域コミュニティのなかで、母親同士が助け合ったり、世話を手伝いあったりするのも普通の光景でした。

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