ソーシャルビジネスが拓く新しい働き方と市場

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2013/1/29  (1/4ページ)

 前回は、ソーシャルビジネスが社会問題という市場のないなかでビジネスを行うために、いかに事業を組み立てていくのかを、マドレボニータの事例を通して考えました。

 産後女性が自分の可能性にも気づき、顧客となる。インストラクター育成を通してサービスの質や価格のスタンダードをつくると共に、ITもフル活用し生産性を向上させる。そうして展開し始めた事業は、課題を抱える産後女性は多数いるのに、できることが限られているという壁にぶつかります。

白書、サロンを通して問題意識の共感と理解を広げる

産後白書は6000部、英訳版も含むシリーズ全体で1万部が発刊された産後白書は6000部、英訳版も含むシリーズ全体で1万部が発刊された

 先ず、吉岡氏は、産後の女性の実態を伝え、産後ケアの必要性を社会に認知してもらわなければならないと考えました。また、同時期に、スタッフやインストラクター、教室の利用者からも同様の声が複数あがっていました。そこで、産後女性620名へのアンケートとインタビューを行い、産後女性の心と身体、夫婦関係までを考察した報告書「産後白書」を2009年に発刊。産後女性の生の声が詰まった白書は、新聞などにも取り上げられました。読者は女性だけでなく、男性や祖父母世帯にも広がり、「知らないことがこんなにあった」と反響がありました。教育のクチコミでは届かない層に必要性を伝えることができたのです。

出産・子育てと仕事を考える対話の場(ワーキングマザーサロン)は、全国78地域に広がった出産・子育てと仕事を考える対話の場(ワーキングマザーサロン)は、全国78地域に広がった

 また産後女性には出産・子育てと仕事のあり方について悩んでいる人が多数います。そこで、2009年からNECとの協働により、「NECワーキングマザーサロン」が始まりました。トレーニングを受けたファシリテーターが、「母となって、はたらくこと」をテーマに女性が語り合う場を各地で開催していくものです。この事業を成功させるためには、ファシリテーターがマドレボニータの価値観を十分に共有できている必要があったので、マドレボニータの正会員から募集しました。2009年~2021年の活動の累積で、のべ73人のファシリテーターが78市区町で、全509回の対話を開催し、3510名が参加しました。2009年、2010年の対話の成果は、産後と仕事をテーマにした「産後白書2」にまとめられました。

孤立しがちな潜在層の利用機会を広げるため、基金を設立

 さらに、教室への強いニーズがあるのに、シングルマザーなど経済的に余裕がなく、参加費を払えない人たちがいます。そこで、2011年より、ひとり親、多胎の母、障がいをもつ児の母、低体重出生児や早産児の母、10代の母、東日本大震災で被災した母など、社会的に孤立しがちな母親達たちを対象に、産後のボディケア&フィットネス教室の参加費を補助する「マドレ基金」を立ち上げました。基金への寄付を集め、それを教室の利用料とすることにより、約100組が教室に参加し、孤立しがちな人が心身の健康と仲間を得る支援とインストラクターたちの仕事を両立させて運営できるようになりました。また、双子の母親が教室に参加するときには、教室の卒業生から「介助ボランティア」を募集し、母親ひとりでは困難な双子の世話をしながらの教室参加をサポートする仕組みも整えました。それによって、教室の卒業生の「困っている人の力になりたい」というニーズにもこたえられるようになりました。

>> 事業をきっかけに、自ら課題解決に取り組む活動も生まれる

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