【著者が解説】池上彰のやさしい経済学

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2012/6/15  (1/3ページ)

 いま日本では、デフレが深刻な問題となっています。デフレとはデフレーションの略で、物価がどんどん下がっていく持続的な物価下落のことです。経済学においては、これまで長い間、デフレはほとんど問題にされてこなかったという現状があります。最近はそうでもありませんが、昔の教科書を見たりすると、インフレについては詳しく説明していても、デフレについてはそもそも触れていなかったり、「インフレの逆の現象である」くらいしか書いていなかったりします。それくらい、かつてデフレは珍しい現象でした。

 まず、インフレとはどんなことなのか、ざっくりとしたイメージで考えていきます。インフレは供給よりも需要が多い状態です。供給量よりも欲しいという人のほうが多ければ、ものの値段は上がりますね。いったんものの値段が上がると、さらに上がるかもしれないから今のうちに買っておこうという人が殺到します。結果的にさらに需要が増え、またものの値段が上がる。これが繰り返され、お金の流れがどんどん活発になり、経済全体がわーっと膨らんでいく、膨張していくイメージ、これがインフレーションです。

 デフレはその逆です。需要に比べて供給のほうが多い。ものが売れない。いったん売れない状態になると、企業は何とかものを売りたいので、商品の値段を下げます。そうすると、商品が売れても利益は減りますよね。利益が減れば、企業は社員の給料を減らします。

イラスト・北村人イラスト・北村人

 企業の社員も消費者ですから、給料が減る、ボーナスが出ないとなると買い物をしなくなります。ものが売れなくなるから、企業はまた商品を値下げせざるを得ません。するとまた、給料が減り、消費も減る。

 こうして、みんながどんどんものを買わなくなり、経済が縮んでいく。これをデフレ・スパイラルと言います。らせんのようにぐるぐる落ち込んでいってしまう、沈んでいってしまう、これがデフレのイメージです。

 日本は戦後長い間、インフレに悩まされてきました。高度経済成長によって国は急速に豊かになり、給料もどんどん増えました。給料が増えると、みんながいろいろなものを買いたくなります。つまり需要が非常に多かったため、ものの値段がじりじりと上がっていったのです。

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