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【著者が解説】池上彰のやさしい経済学

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2012/6/22  (1/3ページ)

 1989年12月29日、日経平均株価は3万8915円という高値をつけました。この日は後に“バブル絶頂の時”と言われることになります。今回はバブルがどのようにして起こり、どのようにして終焉したのかを検証していきます。

 ニューヨーク、セントラルパークの東南に「プラザホテル」という五つ星の豪華なホテルがあります。1985年9月にこのホテルで行われた5カ国蔵相会議(5G)で、ドル高是正のための合意がされました。この「プラザ合意」が、日本のバブル経済のスタートでした。

 この時、なぜドル高の是正が行われたのでしょうか。当時、日本の経済がどんどん発展し、アメリカへ日本製品が大量に輸出されていました。日本から安くて品質の良い商品がたくさん入ってくるので、アメリカの企業は太刀打ちできなくなっていきます。そのうち、アメリカ議会が「何とかしろ」と怒り出しました。

 日本の製品がアメリカに大量に入ってこないようにするにはどうしたらいいのか。「円」の価値を上げればいいですよね。円高ドル安になれば、日本から輸入した製品をアメリカで売るとき値段が高くなるため、ものが売れにくくなります。一方、ドル安なのでアメリカは自国の製品を海外に安く輸出できます。いまアメリカには中国製品が大量に入ってきてアメリカの企業が困っているため、議会が中国に対して「人民元」を切り上げるよう圧力をかけていますが、かつてその日米版があったということです。

 このプラザ合意は、日本とアメリカだけの合意ではありませんでした。アメリカの経済が危機的な状況になると、その影響は世界中に及びます。そのためイギリス、西ドイツ、フランスといった先進国が集まって合意が行われたのです。たとえば西ドイツでは西ドイツマルクが高くなるように、対ドル相場を調整すると合意しました。

 先進5カ国はドルが安くなるよう、一緒に為替介入を実施しました。為替介入とは、政府が意図的に外貨を売買し、外為市場に介入することです。このように各国が足並みをそろえて為替介入を行うことを協調介入といいます。各国の中央銀行は、保有するドルを大量に売り出しました。日本の場合だとドルを売って円に換えるので、円の需要が高まる。すると円の価値は上がりますね。逆にドルの値段は下がっていきました。

 このようにして一挙に円高ドル安が進み、日本の輸出産業は大打撃を受けました。日本は不況に陥ったのです。

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池上 彰プロフィール

「お金はなぜお金なのか?」「資本主義は失業者を生み出す?」「産業の空洞化って何?」。経済学の基礎知識を身につければ、最新ニュースも驚くほどよくわかります。わかりやすい解説でおなじみの池上彰氏の書籍「池上彰のやさしい経済学」1巻・2巻からそのエッセンスを10回に分けて連載します。講義は学生向けですが、経済のしくみについて理解を深めたいビジネスパーソンにもお薦めです。経済学の基礎から日本経済・世界経済のいま知りたいポイントまで、ズバリ解説します。

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