【著者が解説】池上彰のやさしい経済学

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2012/6/1  (1/3ページ)

「新自由主義」を唱え、ケインズ政策を批判したフリードマン
~人間にとって何よりも重要なことは「自由」である~

 市場の原理を「見えざる手」にたとえ、自由放任を主張したアダム・スミス。公共事業など、政府が市場に介入することで経済はうまくいくと主張したケインズ。そのケインズの理論を批判し、再び自由主義に光を当てたのが、アメリカの経済学者ミルトン・フリードマンです。彼はシカゴ大学の教授として、多くの経済学者を育てました。彼とその弟子たちは「シカゴ学派」と呼ばれ、政治に強い影響力を持つことになります。

 フリードマンは「新自由主義」の旗手と言われています。アダム・スミスの自由放任の考え方をさらに徹底的に推し進めたのがフリードマンでした。人間にとって何よりも大事なことは自由である、自由に行動することが最もすばらしいことなんだ、これが彼の考え方です。このような人のことを「リバタリアン」と言います。人を殺したりものを奪ったりしてはいけないけれども、人に迷惑をかけなければ何をやっても自由じゃないかという考えです。

 かつてアメリカでは禁酒法が施行され、お酒をつくることも飲むことも禁止された時代がありました。ところが当時のマフィア、アル・カポネが酒の密売を行い、闇の世界が大きく拡大してしまいました。禁止をすると裏で金儲けをしようという者が現れて、逆に闇世界がはびこる。だから全部自由にしてしまうほうがいい、これがフリードマンの考え方です。

 新自由主義は、アメリカではとりわけ共和党に大きな影響力を持っており、歴代の大統領にとっての知恵袋となっています。1981年にはロナルド・レーガンが大統領に就任し、福祉予算の削減、企業減税、規制緩和などを行いました。市場原理を重視したレーガンの経済政策はレーガノミクスと呼ばれました。日本では、当時の中曽根政権がそれまで行政が行ってきた事業を次々と民営化し、NTTや日本たばこ産業、JRグループなどを設立しました。当時、中曽根総理とレーガン大統領は、「ロン」「ヤス」と呼び合って仲のよさをアピールしており、経済政策においても同じ新自由主義を推し進めていきました。

 この頃、小さな政府を目指す政権が世界のあちらこちらで見られました。イギリスで新自由主義的な経済政策を行ったのが、1979年に首相に就任したマーガレット・サッチャーです。サッチャーは規制緩和や政府系企業の民営化を次々と行いました。この経済政策はサッチャリズムと呼ばれました。

 また、フリードマンは「マネタリスト」とも呼ばれ、ケインズが唱えた公共事業や累進課税などの政府による経済への介入を否定しました。彼は、政府が世の中を流れるお金の量さえコントロールすれば経済はうまくいくと主張したのです。

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