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巨大企業をたちどころに再建した外国人経営者。日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)はグローバル人材の育成に力を入れている。米欧や早稲田大学のビジネススクールと組み、日産以外の幹部候補も集め、2016年も夏と秋に特別講座を開講する。昨年10月には早大ビジネススクールの池上重輔准教授が代表質問役となり、ゴーン氏が答える形で展開した。「ゴーン先生」の白熱教室をのぞいた。

(下)ゴーン先生「危ない会社こそ好機だ」>>

――ゴーンさんは、多国籍な経験をしている。過去に多様な文化を経験をしていないマネジャーがどうすればグローバルリーダーになれるのですか。

今のインターネット社会では無理ではないでしょう。1つの国で教育を受けている場合、グローバルリーダーになるのは確かに難しいが、家にいても世界の旅ができる時代です。コンピューターがあれば、どことでもつながる。中国の新聞も読める、アフリカの音楽も楽しめる。私の世代の人間はキャリアをスタートした時できなかったことができる。

成長したい、異文化から学びたいという意欲があれば大丈夫です。1つの国で育った人がグローバルリーダーになることは、他国で勉強や仕事している人よりも難しいが、可能ではある。海外出向者になったり、外国人の従業員と一緒に仕事をしたりして、学ぶことはできるわけです。

――日産再生についてケーススタディーを学んだが、当時の日産はどうだったのか。

1999年の日産自動車は深刻な危機に陥っていた。危機的状況にあると、どのような優先順位でそこから脱却するかにある。10年後ではない。いま火事が起きている。どうやってこの状況をコントロールして脱出するかを考える。当時、どうやってこの火事を抑えるか、源はどこか、どうやって家を建て直すかを考えた。

15年後、20年後どうするかは考えていなかった。基本的な健全な会社に戻すこと。明確なビジョンはしっかりあったわけではない。本当に大丈夫か?ただ、それだけだ。99年3月に来日し、6月に株主総会、10月に「リバイバルプラン」を発表した。そこで私はコミットした。未達の場合は辞任すると。前の経営者もトライしたが成功しなかった。危機的状況では明日を考えない。いまどうするか。その後、緊急事態がおわって、明日を思う。

経営者にスーパーマンはいない

――ゴーンさんは経営のスーパーマンにみえる。欠点はないのでしょうか、仮にあればどのように補っているのか。

スーパーマンは経営者にいない。マネジメントの重要なカギは学びのプロセス。学んで結果を出すことの繰り返しだ。成果をだせばパフォーマンスで評価される。リーダーは実績のみで評価される。無理だとおもわれる実績をだすと、すごい、優れているとの評価になる。

私にも弱点はある。説得力がないとか、間違った人選をしたなど、失敗は少なくない。優れたマネジャーは客観的に自分の中で、弱点を見極める人だ。ただ、自分自身で客観的な評価をするのは厳しい。だから多くの人たちはできない。しかし自分の弱点を見極めるだけで、違う人になれる。たとえ結果が悪くても、一般的なマネジャーはベストをつくしたと思いがちだ。しかし、どうして問題になったのか、を徹底的に考え、解消することが重要なのだ。

私は16年間も同じことをしてきた。朝5時半におきて、世界中を飛び回っている。どうしてわざわざ厳しいことをするのか、とよく問われる。ビーチにいったほうが楽しいでしょと。しかしそうではない。仕事とは学びだから、ワクワクする。学ぶときに最もモチベーションがあがる。だから若々しさを維持できる。

私自身も弱点があり、解消しようと努力している。完璧ではなく、よりよくなりたいと。スーパーパフォーマンスはあるが、スーパーマンはない。私にはチームしかない。厳しい危機、大変なことがある。常に立ち上がれるのは学んでいるから。退屈でない。ルーチンではないから、フラストレーションもあるが、楽しみでもある。

(代慶達也)

〔2015年10月20日公開の日経Bizアカデミーの記事を再構成〕

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