セミナー体験記

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2012/1/31  (1/3ページ)

 一般の人にとって法律は難しく、とっつきにくいもの――。そう思い込んでいた私の認識を一変させる話を聞いた。

 「捜査経験からみた会社関連の不正行為・法令違反とその予防策」(日本経済新聞社主催)と題するセミナーを行ったのは、元東京地検特捜部長で弁護士の大鶴基成氏。いわゆるライブドア事件などの捜査に関わったことで知られている。粉飾決算などの企業関連の事件や不祥事が相次ぎ、コンプライアンス(法令順守)の重要性があらためて認識されており、会場には企業の法務部門に所属する人を中心に約100人が集まった。

 大鶴氏は具体的な検討事例を挙げて、満員の聴講者に質問を投げかけて講義した。1問目は「リベートの受領」についてだ。

「罪になる?ならない?」 実際の事件や問題を題材に意外な解説

具体的な検討事例を多く用意し、聴講生に出題して答えさせる大鶴氏。全員が一体感を持ってセミナーに参加していた。具体的な検討事例を多く用意し、聴講生に出題して答えさせる大鶴氏。全員が一体感を持ってセミナーに参加していた。

 「O社の事件でファンドに融資した銀行員3名に合計30億円のリベート」という報道があったが、このような場合の銀行員らは罪になるか?

 「罪になる」と私は即座に考えた。30億円ものリベートをもらったのだから、何らかの罪に問われると思ったのだ。だが、大鶴氏の見解は違った。このケースでは「特別背任」であるかどうかが問われるが、会社法960条1項は「次に掲げる者(取締役等)が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を与える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に損害を与えたときは、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と規定している。なお、併科とは懲役と罰金の両方を処すことを言う。

 この法律に基づいて考えると、リベートを得た銀行員らはそもそも取締役ではなく、しかも会社に損害を与える目的でそうしたわけではない。したがって、リベートを受け取るだけでは罪に問えないと大鶴氏は言うのだ。

 「へえ、そうなんだ。罪にならないんだ」。私はこの話を聞いて俄然、大鶴氏の話に興味を持ち始めた。「法律って良くも悪くもいい加減なところがあるんだなあ」と。

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