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2013/1/9  (1/4ページ)

 近年、ビジネスの手法によって社会問題を解決しようとする新たな動きが広まってきている。社会的価値と経済的価値はこれまで、企業のビジネス活動展開において相反する概念であると考えられてきた。しかし、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・E・ポーター(Michael E. Porter)教授が提唱する共通価値の創出(Creating Shared Value=CSV)という概念によると、それらは相反するものではなく、両立することによって企業はむしろ新たなビジネスチャンスをつかめるという。このほど、一橋大学大学院国際企業研究科が主催するポーター賞表彰式のため来日したポーター教授に、CSVを構想した経緯や意義について聞いた。9日と16日の2回に分けて掲載する。

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■共通価値の創出とは何でしょうか。

 世の中には環境問題や住宅問題、健康問題、飢餓、障害者雇用など様々な社会問題があります。共通価値の創造(CSV)とはビジネスと社会の関係の中で社会問題に取り組み、社会的価値と経済的価値の両立による共通の価値を創造するという理論です。

 自社の事業の特性や社会との接点をよく考え、3つのコンセプト、すなわち(1)市場における製品、(2)バリュー・チェーン、(3)ビジネス環境、を見直すことで実現されうると考えます。

 社会問題とビジネスは分けて考えられるものではありません。そして大きな社会問題には実は大きなビジネスチャンスがあり、CSVの概念により企業は、よりユニークで他社にはない戦略を策定することができます。市場の拡大においては多くのチャンスが潜んでいて、例えば製品製造過程の改善のプロセスにおいても社会問題にインパクトを与える要素は潜んでいるのです。

■CSVのアイデアはどのように発想しましたか。ファイブフォース分析(Five Force Analysis「Competitive strategy」1980)からバリュー・チェーン(Value Chain「Competitive advantage」1985)を経てCSVに至る変遷を伺わせてください。

 ファイブフォース分析(=FFA)は産業に視点を置き、バリュー・チェーン(=VC)は企業に視点を置いた理論でした。CSVはVCのコンセプトの一部から生じた概念で、ビジネス環境に多大な影響を与えます。

 これまで企業が公害や二酸化炭素排出を削減しようとする場合、更なる多額のコストが発生し、それに比例して働かなくてはならないと考えられていました。しかし、労働者が毎日、より効率的に仕事に励むには健康的な労働環境と経済的利益が必要です。ここ10~15年、問題となっていた環境や健康といった基本的な社会問題をわれわれが解決するためには、その前提として社会改善や効率的な企業運営が必要になります。そこに論争はありません。

>> CSVは企業が現在見落としている市場があるという前提に立つ

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