仕事で使える資格は何か~資格ランキング2016
ビジネス実務法務検定の満足度上昇 英語力への関心、引き続き高水準
「取ってよかった」!~回答者の実感をランキング
取った資格に対する「満足度」は、コストとパフォーマンスのバランスによって決まる。例えば、いかに安く短期間で取得した資格であっても、取得後の成果が得られなければ、満足度は低くなる。逆に「年収がアップした」「職場でよい評価を受けた」といった具体的なメリットがあれば、時間や金銭面のコストが多少高くても「取ってよかった」という実感が生まれるだろう。
ここでは、ビジネスパーソンのそうした「実感」をランキング化した。具体的には、保有資格を3つまで挙げてもらい、「費用」「時間・手間」「活用度」「将来性」のカテゴリーごとに、各5点満点で満足度を採点してもらった。
「費用」には、参考書代や学費、受験料、「時間・手間」には取得に掛かる期間、勉強時間などが含まれる。点数が高いほど、その負担感が少なかったといえる。一方、「活用度」「将来性」の得点は、「取得後の手応え」に比例する。従って、全カテゴリーの合計点が高い資格ほど、高順位となる。
今回の調査は、回答者の6割が女性だった前回に比べて男性比率が増え、8割近くを占めた。ただ、上位の傾向はそれほど変わらず、「秘書技能検定」「日商簿記検定」など、業種・職種を問わず幅広い層が受験している資格が目立った。
実用的な法務知識のニーズが高まる
総合ランキング1位に輝いたのは「応用情報技術者」。ITエンジニアのステップアップには必須の資格だ。各カテゴリーでバランスよく得点し、すべての資格で唯一、14点台に乗せた。IT系では、6位の「マイクロソフト認定」にも注目。本調査ではこの中に、人気の「マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)」を含めて集計している。エクセルやワードなどのスキルを証明することができ、実務での活用度が高い資格として企業からも評価されている。
「ビジネス実務法務検定」は、3級が3位に、2級が4位にランクイン。ビジネスの現場で法律知識習得への注目度が高まっていることがうかがえる。昨今、個人情報の流出など、企業のコンプライアンス意識の希薄さが要因となった不祥事が、ニュースでたびたび報じられた影響もあるだろう。
実務に直結する「役立ち度」を調査
回答者が保有する資格の中で「仕事に役立っていると考える資格」を挙げてもらい、集計した。満足度ランキングの「パフォーマンス」評価と比べると、より具体的に「現在取り組む業務に役立っている資格」が分かるランキングとなっている。業務上の必要に迫られて取得した場合は「業務上」、業務に役立つと考えて自主的に取得した場合は「自主的」、と区別して回答してもらった。それぞれの回答者数を「その資格の保有者」の数で割り、「役立ち度」を算出した。
今回は「管理業務主任者」「プロジェクトマネージャ」が同率で1位となった。お役立ち度は100%なので、保有者全員が「役立った」と実感を得ていることになる。
「管理業務主任者」は、マンション管理のマネジメントを担当する業務独占の国家資格だ。マンション管理業者には、この資格取得者を一定数配置する義務も課されており、その業界で働いているなら、就職時にも有利になるだろう。
「プロジェクトマネージャ」はIT系の国家資格で、合格率は1割程度の難関。IT系で、プロジェクト全体を統括できる人材を目指すなら、ぜひ取得しておきたい。実務でのリーダー経験と掛け合わせれば効果は大きい。
3位には「メンタルヘルス・マネジメント検定II種」。前回27位からランクアップした。2015年12月に、50人以上の従業員を抱える事業所に対する「ストレスチェック」が義務化された。企業内での取り組みが活発になってきた影響で、資格を生かす機会が増えたのだろう。II種は主に組織の管理監督者を対象にしているので、人事担当者やマネジャークラスの社員の受験が多いとみられる。
金融系資格はキャリアの足掛かりに
概観すると、業務に密着した資格が目立つ。特に24位以内に5資格がランクインした金融系では、専門的な知識を深めキャリアアップするための足掛かりとして、資格を取得する傾向がみられる。業務に必須の「二種外務員」をはじめとして、証券・投資業務のプロになれる「証券アナリスト」、国際資格の「CFP」などが高いポイントを獲得した。
英語系の資格は、試験種別にかかわらず、安定して支持されているようだ。
業種・職種を問わず英語力に高い関心
ここでは、「(今後)勉強したい、勉強を始めている資格」を挙げてもらい、集計した。具体的には、「新たに資格取得を目指して勉強したいと考える分野がある」と答えた人数全体に対し、「その資格を挙げた人数」が占める割合を個々の資格ごとに算出。そのポイントが高い順にランキング化した。ビジネスパーソンが今欲しいと感じているスキルが分かる。
総合ランキングの1位は「中小企業診断士」となった。試験の合格率は1次・2次ともに2割前後とあって「気軽にチャレンジ」というわけにはいかないが、経営について幅広く学ぶことができるため、取得すれば業界を選ばず活躍の場を広げられるだろう。
「TOEICテスト」は総合2位にCレベル、3位にBレベルがランクインした。日常会話レベルは最低限押さえ、キャリアアップや転職において武器にすることを考えると「800点前後を取っておきたい」といったところが平均的な実感なのかもしれない。「Aレベル」「Dレベル以下」も10位以内に入った。業種・職種によって求められるレベルは異なるが、英語力への関心は高い。
「日商簿記検定」も、2級が6位、3級が7位にランクインした。財務・経理関連データの読み取りはビジネスパーソンの基本スキルであり、幅広い関心を集めている。金融系定番の「ファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定」も、12位に入った3級は個人の資産計画などにも役立てられる基礎レベルで、挑戦しやすい。
●調査方法/日本経済新聞、日経Bizアカデミーと日経キャリアマガジンが共同で行った「ビジネス系資格・語学調査」をもとに作成。調査は20~40歳代のビジネスパーソンを中心に、インターネットによる選択式、記述式混合のアンケート方式で実施した。各設問で回答者数7人以下の資格は除外した。
●調査期間/2015年11月6日~11月12日
●回答者数/903人(男性:703人、女性:200人)
[日経Bizアカデミー2016年1月12日付]