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2012/6/28  (1/5ページ)

立教大学経営学部経営学科(大学院ビジネスデザイン研究科)教授 亀川雅人さん

 企業経営のグローバル化が進み、「世界標準」のマネジメントが日本企業にも押し寄せつつあるが、企業の風土は当然、国・地域ごとに異なる。欧米ビジネススクールの手本がそのまま日本企業に当てはまるとは限らない。立教大学で10年前にビジネススクール(ビジネスデザイン研究科)を立ち上げた中心人物の亀川雅人教授が書いた『大人の経営学―MBAの本質に迫る』(創成社)は、新聞記者と亀川教授の掛け合いというソフトな構成を通して、日本に望まれるMBA(経営学修士)の輪郭をおぼろげに浮かび上がらせている。

 転職したばかりの新米女性新聞記者がかつての恩師である亀川教授に経営学の疑問点について教えてもらうという設定でストーリーが進む。「もしドラ」のMBA版といった趣の仕立てで、気軽に読み進めやすい。学部生時代はあまり熱心な学生ではなかったとおぼしき記者の素人感覚の質問に、亀川教授がかんでふくめるような語り口で経営学の要諦をつまびらかにしていく。現役のビジネスパーソンが仕事を続けながら通いやすいビジネスデザイン研究科を育てた亀川教授に、日本のビジネスシーンになじむMBA像や、働きながら学ぶ意義、同研究科の特質などを教わった。

■社会人がMBA知まとう意義

――副題に「MBAの本質に迫る」とある割には、ちっとも堅苦しくない上、欧米流ビジネススクールにありがちな生臭さが強く感じられません

 立教大学でビジネススクールがスタートして今年で10年になります。過去10年間の成果をまとめてみたいという思いもあって、この本を書きました。以前から校友会では「社会人がビジネスを学べる大学院コースを設けてほしい」というニーズが強くありました。社会的な要請もあり、ビジネスデザイン研究科を2002年春にスタートしました。10年間を振り返ると、学生は20代から70代までと幅広く、社会人が学ぶ場を作った意義をあらためて感じます。ビジネス構想力や戦略的思考を育てるMBAコースでありつつも、総合的なパースペクティブを備えた「ジェネラリスト」の育成を意識している点が他校との大きな違いと言えます。この本には過去10年間の運営から感じたMBAに関する私なりの考えや、学生から耳にした疑問・要望なども反映しています。

 学生の経歴を見て興味深く思うのは、プロフェッショナルな仕事に就いている人が多い点です。例えば、医師や看護師、鍼灸師といった医療関係の専門家が少なくありません。大企業の幹部候補生が学ぶイメージが英米型のビジネススクールには強いかも知れませんが、実はビジネススクールで学ぶメリットは既に専門的な職業を持っている人にも大きいのです。病院の経営に携わる医師がMBAノウハウを身につければ、待ち時間を縮めたり居心地をよくしたりするような患者の役に立つ経営改善の選択肢が広がります。専門性の高い業種や職場には、その分野のスペシャリストしかいないケースが珍しくなく、よそのビジネス知が持ち込まれないせいもあって、非効率に陥っている場合が意外に多いものです。業務の実態をよく知るエキスパートがMBA知を得る効果は現実への生かしやすさや効果の大きさという面でも期待が大きいところです。

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