ゲーム・チェンジャーの競争戦略

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2015/3/27  (1/3ページ)

 早稲田大学ビジネススクール(WBS)の内田和成教授が新しい競争戦略論『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(日本経済新聞出版社)を刊行しました。スマホゲームの台頭で苦戦する任天堂、商品売り上げより会費で稼ぐコストコ、不動産業者に変身した大和ハウス工業などの事例をもとに、競争のルールそのものを破壊する戦い方と、その防衛策を検討した内容です。日経Bizアカデミーでは4月28日(火)、内田教授と、ともに執筆にあたった内田研究室OBのメンバーによる新著の解説セミナー「ゲーム・チェンジャーの競争戦略を読み解く」を開催します。これに先立ち、新著の総論に当たる第1章を3回に分け、抜粋して紹介します。

 いま、業界そのものが消えてなくなったり、あるいは他の業界と融合してしまったりする事態が、そこかしこで起きています。

 あなたの事業も、いまのままの形態で将来も安泰だといいきれますか。

 こうした警告を発した前著『異業種競争戦略』では、販売チャネルやコスト構造、得意とする技術や業態、ブランドイメージがまったく異なる相手と戦う局面が、成熟する市場のなかで増えてきていることを明らかにしました。この業界の垣根を越えた顧客の奪い合い――「異業種競争」においては、どこから新たな競争相手が現れるかわかりません。

 また、異業種競争は、これまでの競争戦略では説明できません。従来の競争戦略は、「同じ業界内での競争」を前提としたものであり、そこで起きる新規参入や取引先との力関係を説明したものだからです。

 そして、いま、異業種競争はますます激化しています。本書では、そうした戦いのなかで競争のルールを破壊している企業(プレーヤー)の戦い方にフォーカスします。こうした業界のルールを変えてしまうプレーヤーを「ゲーム・チェンジャー」と呼ぶことにします。これが本書の主役です。

クラウドサービスに起きた価格破壊

 たとえば、2015年1月現在、世界最大のサーバー貸し出し事業者は、アマゾンです。同社が提供する「Amazon Web Services(AWS)」はクラウドサービスにおいて世界で最も大きなシェアを占めています。そして、それを追いかけているのがグーグルで、最近ではマイクロソフトも同サービスに力を入れています。

 かつて、サーバー貸し出し事業ではIBMやヒューレット・パッカード(HP)などのハードメーカーが主役でした。では、短期間に、なぜ、主要プレーヤーが入れ替わってしまったのでしょうか。

 理由は、アマゾンやグーグルが、世界中に展開している自社のデータセンターやそこに置いてあるサーバーをユーザーに貸し出すというサービスを始めたからです。

 アマゾンやグーグルはすでに自社で巨大な設備を持っており、その一部を中小企業などに貸し出すのです。そのため、ゼロからの投資ではありません。むしろ、外部に貸し出すことで、設備投資においては規模のメリットを享受できます。また、外部に貸し出すことで需要を平準化することができるため、より効率的な運用ができるようになります。こうした利点を活かして、アマゾンは、きわめて安価なクラウドサービスの提供を始めたのです。これが、中小企業などのニーズをとらえ、シェアが急伸しました。

 余っている設備の有効活用ですから、安いに決まっています。着々と実績をつんだ結果、大手ユーザーの信頼を勝ち得て、NTTドコモやソニー銀行などもユーザーになっています。

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