ゲーム・チェンジャーの競争戦略

この記事をはてなブックマークに追加 この記事をmixiチェックに追加
印刷
2015/4/3  (3/3ページ)

新しい製品やサービスを提供しているか

 もう少しくわしく見てみましょう。マトリクスの横軸は、これまで他社が提供してこなかった新しい製品やサービスを生み出したかどうかです。

 ただし、既存の製品やサービスの見せ方を変えただけでは、新しい製品やサービスとはいえません。ここでは、新たな需要や市場の創出につながる、まったく新しいものが対象です。具体例としては、パソコンや携帯電話が登場したときのように、それまで世の中になかった、まったく新しい製品やサービスです。あるいは、電子書籍や電気自動車のように、既存の製品やサービスとよく似た機能や価値をまったく異なる手段で実現した製品やサービスが挙げられます。

 マトリクスの右側に位置するのが、こうした新しい製品やサービスを提供することでゲームチェンジを起こそうとするプレーヤーです。新市場は、既存企業が事業を行っている既存市場と異なるため、直接競合しない(したとしても、それほど影響がない)こともありますが、新市場が既存市場に取って代わるようになると、既存企業にとって脅威となります。

 一方、マトリクスの左側に位置するのが、新市場ではなく既存市場で戦うプレーヤーです。しかし、既存の製品やサービスでも、コスト構造や付加的なサービス、業務プロセス、儲けの仕組みなどを変えることで競争のルールを変えてしまうプレーヤーがいます。たとえば、理髪業でイノベーションを起こしたQBハウス、あるいは冒頭で紹介したスマホゲームなどが挙げられます。

 どちらも、提供している製品やサービスはすでにあるものですが、これまでとは異なる提供の仕方を生み出し、成功しています。既存企業にとってはそれが自社の製品やサービスを否定するものだと、(事業がうまくいっているほど)脅威となります。

新しい儲けの仕組みを持ち込んだか

 縦軸は、これまでその業界で当たり前とされていた儲け方に対して、新しい儲けの仕組みをつくり出したかどうかです。

 マトリクスの下段に位置するのが、新しい儲けの仕組みを持ち込むことでゲームチェンジを起こそうというプレーヤーです。たとえば、かつてのレコードレンタルのように、これまでは販売することが常識だったレコード業界に「レンタル」という販売しない仕組みを導入したケースが代表例です。

 ちなみに、音楽業界ではその後も、「iTunes」のようなネット決済の仕組みや、毎月定額で音楽が聞き放題の「Spotify(スポティファイ)」といったビジネスモデルも登場しています。スマホゲームや地図サービスのように、これまではお金を払うのが当たり前だった商品やサービスを無料にして、その他で課金される仕組みを設けるというケースも、これに該当します。

 こうした新しい儲けの仕組みが導入されると、既存企業がそれまでの儲けの仕組みを維持するのが困難になります。

 もちろん、儲けの仕組みを変えない戦い方もあります。マトリクスの上段に位置するのが、そうしたプレーヤーです。本章の冒頭で紹介したザッポスやゾゾタウン、あるいは後述する「セブンカフェ」(セブンイレブンがセルフ式で提供しているコーヒー)などがあてはまります。

 次回は、マトリクスに位置する4つのゲーム・チェンジャー─プロセス改革型、市場創造型、秩序破壊型、ビジネス創造型の具体例を見ていきます。

 日経Bizアカデミーは4月28日(火)夜、東京・早稲田の早稲田大学早稲田キャンパス内で無料セミナー「ゲーム・チェンジャーの競争戦略を読み解く」を開催します。

 早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授ほかが登壇し、競争のルールを破壊する戦い方を4つのタイプに類型化し、その攻め方、守り方について一端を紹介します。めまぐるしく変わるビジネス環境の中、新たな視点を持つきっかけにもなる内容です。

 皆様のご応募をお待ちします。申し込みはこちら

 【開催概要】
 日時:2015年4月28日(火) 19:00~21:00 (18:30開場)
 会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 11号館501教室
    (東京都新宿区西早稲田1-6-1)
 参加費:無料(事前登録制)
 定員:約200名

◇   ◇   ◇

内田 和成(うちだ・かずなり)
早稲田大学ビジネススクール教授

東京大学工学部卒。慶慮義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表を務める。さまざまな業界の大手企業を中心に戦略の策定・実行を支援するプロジェク卜を数多く手がけ、2006年には「世界で最も有力なコンサルタン卜のトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出された。2006年より現職。ビジネススクールで競争戦略やリーダーシップ論を教えるほか、エグゼクティブ・プログラムでの講義や企業のリーダーシップ・トレーニングも行う。また、三井倉庫社外取締役、キユーピー社外監査役なども務める。著書に『デコンス卜ラクション経営革命』(日本能率協会マネジメントセンター)、『仮説思考』『論点思考』(いずれも東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)などがある。

ゲーム・チェンジャーの競争戦略 ―ルール、相手、土俵を変える

著者:内田 和成
出版:日本経済新聞出版社
価格:1,728円(税込み)

<< >>
バックナンバー

この連載の一覧
著者プロフィール

この著者の連載一覧

  • ゲーム・チェンジャーの競争戦略