ゲーム・チェンジャーの競争戦略

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2015/4/10  (1/3ページ)

 (前回提示した)マトリクスに位置する4つのゲーム・チェンジャー─プロセス改革型、市場創造型、秩序破壊型、ビジネス創造型の具体例を見ていきます。

秩序破壊型(Breaker)

 秩序破壊型は、既存企業にとって最も手強い競争相手です。これまでとほぼ同じ製品やサービスが、異なる儲けの仕組みで提供されるからです。その儲けの仕組みが消費者にとって歓迎すべきものだったとき、既存企業は窮地に立たされます。

 スマホゲーム これまで外出先でゲームを楽しむには「ニンテンドーDS」や「プレイステーション・ポータブル(PSP)」といったゲーム専用機を購入するしかありませんでした。しかし最近では、スマホでも簡単にゲームを楽しめるようになりました。

 しかも、ゲーム専用機用のソフトが1本数千円するのに対し、スマホで楽しめるゲームの多くは無料か、あるいは100~300円程度です。消費者にとっては、ゲーム専用機を持ち歩かなくても、無料あるいは低価格でゲームを楽しめるようになりました。

 既存のゲーム業界の儲けの仕組みはハードとソフトの代金の2本立てですが、実はハードではほとんど儲けが出ておらず、「補完品」であるソフトで稼いでいたのです。

 ところが、スマホのゲームでは、ハードを用意する必要がありません。ソフトの開発費用はかかりますが、あとはネット配信するだけです。デジタル・プロダクトなので追加の製造コストもわずかで、無料で配布しても余分なコストはほとんど発生しません。

 では、どうやって稼いでいるのでしょうか。それは、広告とアイテム課金です。広告をゲーム画面に出すことで、広告主から広告代をもらっています。地上波テレビと同じビジネスモデルです。広告主にとっては、ひとりでも多くの人の目に触れてもらいたいので、ゲームが無料のほうが多くのユーザーが集まると期待できます。

 アイテム課金は、「フリーミアム」と呼ばれる仕組みです。ネットでの販売や配信が可能なデジタル・プロダクトでは追加の製造コストがほぼゼロなので、たとえば、100名の無料客のうち、5名程度が何らかの理由─たとえば、ゲームを進めるうえで有利になるアイテムを有料で手に入れたいとか、入場券などを優先的に手に入れたいなどといった理由で優良客になってくれれば十分に元が取れるといわれています。

 消費者にとってはいいことずくめですが、既存のプレーヤーにとっては、これまでの競争のルールが壊されるだけでなく、対抗戦略を取ろうとすると自分たちの儲けの仕組みを壊さなくてはならないため、難しい意思決定を迫られます。これは、任天堂の業績不振を見ても明らかです。

 秩序破壊型は、①製品やサービスが同じでも、新しい儲けの仕組みを導入することで新たな価値を生み出します。②それを顧客に提供することで既存企業の儲けの仕組みを無力化するとともに、新しい儲けの仕組みが、既存企業にとって真似したくても真似できない参入障壁になっていることが成功のカギといえます。既存企業にとっては非常に嫌な競争相手です。

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