ビジネス書ななめ読み

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2016/2/5  (1/1ページ)

「技術革新、そしてビジネス・イノベーションには、新たな発想、クリエイティビティが必要だと言われる。日本、そして日本人は、これまで欧米の真似をしてきたので、クリエイティビティが足りないのではないか、と言われるときもある。しかし、私にはこれも大きな間違いに見える。日本で起こっているのは、クリエイティブなアイディア、革新的な発想が、特に大企業では、『どこか』で潰されてしまう現実だ」(本書・p8)

「現在の日本企業は、その潜在能力を十分発揮していない」と著者はいう。それはなぜなのかを探り、どうすればそこから脱却できるかを考察した一冊である。類書は少なくないが、米シリコンバレーで27年間、日本企業を中心にビジネス・コンサルティングをしてきたという著者の経験知は耳を傾けておいて損はない。

 本書が展開する「なぜ」の分析は、多くの日本のビジネスパーソンが実感していることに違いない。いわくビジネス・イノベーションの仕組みが作れない。いわく画期的なアイデアが生まれてもどこかで消されてしまう。いわく優れたビジネスを生んでもグローバルに展開できない。そこがもったいないわけである。日本的思考や日本ならではのビジネス環境がその一因とも分析されるが、実は米国にもそんな、もったいない状況だった会社がかつてあったという。著者が長年在籍していたSRIという会社だ。

 技術革新ではすばらしい成果をあげながらビジネス的には順調とはいかなかったこの会社がどのように変貌を遂げ、ビジネス・イノベーションを起こせる仕組みを作り上げていったのかという分析から、著者の筆はのびやかに「もったいない状況からの脱却」プロセスを描き出していく。詳細は本書を読んでもらうしかないが、ポイントになるのはユーザーに価値を提供するという視点からの技術・事業評価の仕組みづくりだ。

 技術をビジネスに昇華させる思考法はアップルやグーグルといった今日のビジネスの勝者にも共通する。こうした思考を会社全体に浸透させるにはトップのリーダーシップが重要な役割を演じると説くが、最後の最後に個人個人でもできることがあると著者は説く。大企業病を肌で感じている日本のミドル層の奮起を促す著者のメッセージが多くの人に届けば、「もったいない状況からの脱却」は近いだろう。(日本経済新聞出版社・本体1600円)

なぜ日本企業のビジネスは、もったいないのか

著者 : 黒田 豊
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,728円 (税込み)

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