ビジネス書ななめ読み

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2015/6/5  (1/1ページ)

「私たち人間が誰でも持っている直感による判断は、正しい場合もあるけれど、現代社会における経済取引や経済的意思決定では望ましくない場合も多い。経済学を身につけると、直感的判断が正しいかどうかを自分でチェックできるようになるのだ」(本書・p4)

 私たちがしがちな行動や思い込みがどのように経済合理性からずれているのか、そんな意思決定のクセを豊富な具体的エピソードを題材に語っていくのが本書だ。

 例えば、著者は「なぜ軽減税率が人気なのか」と問う。経済学的には軽減税率は低所得者対策として有効ではない。にもかかわらず、世論調査などをすると7割の人が賛成を表明する。それはなぜなのか。その理由を著者はアンカリングという行動経済学の概念を持ち出して解きほぐしてくれる。定価が安く値引きがない場合と、定価が高く値引きがある場合では二つの価格が同じなら値引きがあるほうが得したように感じてしまう、そういう心理のことだ。実際のところは生活必需品は高所得者も購入する。支出全体に占める割合は低所得者より少ないが、実際に購入する額は高所得者の方が大きい。それゆえ、軽減税率の恩恵は高所得者の方がより大きく受けるのだ。

 こんな調子で財政政策や税制といった経済の中心的話題から、オリンピックの意外な経済効果や宝くじといった身近な経済事象、さらには体罰や高等教育など社会的な話題にまで目を向けながら、経済合理性からついついずれてしまう人間の意思決定のクセをあぶり出していく。

 表題の通り、「センスを磨く」のにちょうどいい1冊。25のショートエッセーで構成されているので、空いた時間に気の向いた1本をぱらぱらと読むことで、経済的合理性を意識しながら物事を見るクセが身についた気になる。(日経プレミアシリーズ・本体890円)

経済学のセンスを磨く (日経プレミアシリーズ)

著者:大竹 文雄
出版:日本経済新聞出版社
価格:961円(税込み)

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