ビジネス書ななめ読み

この記事をはてなブックマークに追加 この記事をmixiチェックに追加
印刷
2016/2/12  (1/1ページ)

「平和で豊かな環境は日本人から、まだ見ぬ未来に抱く好奇心を奪いました。変化を求める勇気がもてない。必要さえ感じていない。ただそれだけのために、稟議書の手続きは煩雑化し、ミーティングは諸外国の5倍もの時間をかけ、優秀な人材ほどババ抜きの『ババを引く』のを避けて無難な選択に終始してしまっているのが、日本のビジネス現場の現状です。途方もない無駄の中に安息して、日本人の素晴らしい美点は埋没してしまっているのです」(本書・p16)

 熱い本である。米国育ち、日系2世の起業家が日本人に熱く奮起を促す。世界を牽引するリーダーになれと。目指すべきリーダー像とはどんなものか、変化を当然の前提として発想する秘けつは何か。後進をいかに育てるか。一緒に考えていこうと呼びかけるのである。もとは日経産業新聞連載のコラムだが、2年間100回に及んだ連載を5章49本のコラムに再構成して大幅に加筆し、チェンジ・メイカーの教科書として世に問うた。

 リーダー育成にかける著者の情熱は並々ならぬものだ。実際10年ほど前から日本に拠点を移し、スタートアップ企業の育成支援を手がけるとともに、政府機関にも参画、企業研修や政策提言にも精力的に動くなど、その活動はめまぐるしいほどだ。それほどまでに日本を応援する原点には、1980年代、日本人と初めて一緒に仕事したときに感じた良い印象がある。勤勉で優秀、仕事は丁寧でミスがない。そういった美点は変わらないのに、世界の急速な変化から取り残されてしまっている。圧倒的にチャレンジが足りない……。世界の変化を知り、自らを変えよう。メッセージを単純にまとめればそうなる。

 5章の構成は冒頭と最後にルール学が置かれ、間にリーダー学、イノベーション学、教育学の3章が挟まる。ルール学に重きが置かれているように見えるが、それはルールを守れということではない。ルールは破るためにあるというのが基本認識であり、古いルールを新しいルールに置き換えてしまうにはどんな頭の使い方が必要かを考えることがルール学の主眼なのだ。

 そうした新しい世界を牽引するリーダーになるための素地は日本人にたっぷり備わっていると著者は言う。変化し続ける世界と、そこで活躍するイメージをくっきり描き出す本書は、後は行動するのみと読み手の背中を強く強く押してくれる。(日本経済新聞出版社・本体1600円)

ザ・チェンジ・メイカー ―世界標準のチームリーダーになる49のレッスン

著者 : 齋藤ウィリアム浩幸
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,728円 (税込み)

バックナンバー

この連載の一覧
著者プロフィール