ブレークスルー~ヒットを生んだ突破力~

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2012/2/20  (1/4ページ)

名古屋市科学館 学芸課天文係 学芸員 小林修二名古屋市科学館 学芸課天文係 学芸員 小林修二

 2011年3月19日、名古屋市科学館の新館(理工・天文館)がリニューアルオープンした。当初の年間予想入場者数100万人を約半年で達成し、年末までの来場者127万人と好評を博している。同館の目玉は、世界最大級のドームを持つプラネタリウム。最新鋭の設備を駆使して映し出される“本物に限りなく近い星空”は、満天の迫力だ。同プラネタリウムの上映プログラムの作成から解説まで手がける、学芸員の小林修二(こばやし・しゅうじ)に話を聞いた。

◇   ◇   ◇

 緑豊かな白川公園(名古屋市中区)内に銀色に光輝く巨大な球体――その上部のドームが、名古屋市科学館のプラネタリムだ。

 内径35メートルのドームは世界最大級。肉眼で見える6等星までの星約9000個を映し出す光学式プラネタリウム「ユニバーサリウムIX(9)型」(独カール・ツァイス製)は、光ファイバーを用いて鋭い星の像を映し出し、星の色や明るさと等級によるその違い、チカチカとした瞬きまでリアルに再現する。

デジタル式プラネタリウムによる画像デジタル式プラネタリウムによる画像

 さらに、コンピューターでシミュレーションした宇宙空間を6台のプロジェクターで全天に投影するデジタル式プラネタリウム「スカイマックスDSII型」(コニカミノルタプラネタリウム製)は、10万個の恒星の情報を基に過去から未来の星空や宇宙空間の移動などを、迫力あるコンピューターグラフィックスで表現する。このほかにも地平線付近に360度のパノラマ画像を映し出すデジタルパノラマシステムや、プラネタリウム専用に設計された音響システムなど様々な設備を備えている。

 注目されるポイントは多いが、学芸員の小林修二は「結果的にそうなっただけなのです」と話す。「“本物に限りなく近い星空”を再現すること。それが今回のリニューアルの最大の目標であり、こだわりでした」。そのこだわりには、「プラネタリウムで星を見る楽しさを知ったら、自宅に帰ってから実際に夜空の星を眺めてほしい」という、小林ら天文係6人の学芸員に共通する思いがある。

360度のデジタルパノラマ360度のデジタルパノラマ

 旧館では20mだったプラネタリウムのドームの内径は、リニューアルで35mになった。ドームが小さいと、本物の空と比べ、映し出される星と星の間隔が狭まって見えてしまう。できる限り大きなドームにして、少しでも実際の星空のイメージに近づけたいという思いがあった。可能ならばもっと大きくしたかったというのが小林らの本音だ。

 ドームが大きくなったことで床面積も旧館の約3倍になったが、座席数は430席から350席に減らした。「広々とした快適な環境で鑑賞してほしい」という配慮からだ。1席ごとに独立した大型リクライニングシートは、背もたれが後ろに倒れるだけでなく、シート全体が左右に30度ずつ回転する。上映中に体を傾けたり首をひねったりすることなく、楽な姿勢で星を見渡せる。このシートも施設リニューアルに合わせて新しく導入したもの。メーカーでもこういったシートをプラネタリウム用に制作するのは初めてで、試作を繰り返した。「せっかく広くなったのだから座席を増やしてはどうか、カップルシートを作ってはどうかという声もありましたが、350席すべてが回転して心地よく鑑賞できることを優先しました」と小林は話す。

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