日経キャリアアップ面連動企画

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2012/9/4  (1/4ページ)

 1980年に出版されたマイケル・ポーターの著作「競争の戦略」は、経営戦略論を代表する1冊です。企業の経営環境は目まぐるしく変化しており、多くの経営書は数年もしないうちに賞味期限が切れます。なのに、なぜ「競争の戦略」は出版から30年以上たった今でも経営戦略論の中心にいられるのでしょうか。

 その理由は「競争の戦略」が経済学に根差している点にあります。ミクロ経済学に「産業組織論」という領域があり、独占禁止政策の理論的根拠となっています。平たく言うと、独占やカルテルによってどのように超過利潤が発生するかを特定するための理論です。

 この理論を逆手に取れば、独禁法に抵触しない方法で疑似的に独占的な状況をつくり出し、利潤を上げられる可能性があります。経営学でいう「競争優位」とは、まさに独占に近い地位を特定領域で築くことです。

 ポーターはまず、「5つの力」という概念をもとにした業界構造分析を通じて、競争優位をつくれる状況にあるかどうかを判断します。そのうえで、どのような基本戦略を選ぶべきかを定めるというアプローチをとります。「5つの力」などの枠組みはすぐには陳腐化しにくい経済学の理論を支えにしているため、彼の「競争の戦略」は今でも影響力があるのです。

 ポーターは、96年の論文で「日本企業には戦略がない」と批判しています。日本企業は、横並びで混み合った市場に参入するケースが目立ちます。そうした市場で同質的な競争を繰り広げ、結果的に利益率も低く、それでも撤退しない事例に事欠きません。

 「競争の戦略」に象徴されるポーターの理論は「ポジショニング」学派とも呼ばれます。市場で独自の位置を築いて利益率を高めるというのがポジショニングの考え方です。米アップルと韓国サムスン電子の挟み撃ちにあっている企業は今こそ、ポジショニングを再検討すべきでしょう。

>> 超過利潤は必ずしも「悪」ではない

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