日経キャリアアップ面連動企画

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2016/3/29  (1/4ページ)

 本書が出た当時、私はコンサルタント3年目、バブルの始まりということもあり、ずいぶん新規事業のプロジェクトに関わりました。本書が多角化とそれにかかわるリーダーシップに数章を割いているのはそうした時代背景もあると思います。

 「新規事業が軌道に乗るまでは5年とか10年の長い期間の経過が必要で、しかもその間には予期せざる様々な問題が発生する」「その時、社長など経営者は内心ではしまったと思っても、その内心の不安を顔に出してはならない」「しばしばカラ元気のリーダーシップを必要とする」とはその通りで、現在でも当てはまると思います。

 カラ元気を潔しとしない方もいるかもしれませんが、トップの言動は常にメッセージであることは吉原先生も指摘される通りです。トップが弱気になれば成功することも成功しません。

 ただ、人は知らないうちに自信過剰になります。本来努力と工夫を重ねて初めて成功するような新規事業にもかかわらず、「当社のブランドを使えば大丈夫」「大手が中小に負けるわけはない」などという「常識」を自分の中で作ってしまうと失敗のもとです。

 稲盛和夫氏が経営者として「私心なかりしか」を問うことの重要性を言っておられますが、私心というのはおごりや油断、さらにいえば「これだけの資源があるんだから(そんなに努力しないでも)もうかるに違いない」という思い込み、つまりスケベ心ではないかと思うのです。本書に挙げられる成功企業がいずれも大企業でないことは示唆的ですし、バブル期の多角化の多くが失敗しているのもわかります。

 現在のような成熟市場に直面する日本企業の多角化がより真剣であることは間違いありません。ただし「プライドが許さない」「社長が始めたから」というようなことが5年も10年も取り組む理由だとすれば、それもまた「スケベ心」であることをお忘れなきよう。

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