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1991年、高岡工場(愛知県豊田市)総組み立て部に部長級主査として異動する。

赴任した日に工場長(役員)に呼ばれ部屋へ行くと、第2世代の生産調査室の活動を確立させた好川純一さんが出迎えてくれました。好川工場長は開口一番「部長は西岡信義君がいるから君は特命業務をやってくれ。特に最近頭打ちになっている組み立ての生産性向上と、部品物流の合理化が喫緊の課題だ」とのこと。さらに「君に専属の技術員スタッフを付けようと思うが何人必要か」という温かいお言葉も頂きました。

現場を視察する好川工場長(右)

現場を視察する好川工場長(右)

私は「技術員よりも現場で日々困っている現業の工長、組長、班長の中から必要に応じて随時選ばせてください」と応じ、併せて「会議には極力出なくて良いようにしてください」とお願いしたところ「好きなようにやれ」との指示。スタートに弾みが付きました。

最初の2カ月は何も言わずに毎日朝から晩まで現場に出て観察です。顔見知りも増えてきたのでおもむろに口をきいたところ、出るわ出るわ、山のような文句。中でも一番抵抗した組み立て現場たたき上げの川崎達課長(故人)が「組み立ての生産性向上はやるけど、その前にあんたの部下がどんな環境で作業しているか夜勤を見にきてくれ」と訴え出てきました。

早速その日の夜勤に出たところ、彼は出入り口の近くにあるラインの横で待っていました。真冬のことでシャッターを開けてリフトが出入するたびに寒風がラインの中まで吹き込んで来ます。「このシャッターにエアーカーテンを付けてくれと頼んだが今年は予算がないといって先送りされている」。即座に改善班に飛んでいき、アングルを溶接しビニールを張って即席のパーテーションを作らせ、現地に設置させました。

この一件で彼の態度は180度変わり、徹底的に協力してくれました。一緒にラインを観察し問題点を整理。1カ月かけて『コンベアーラインの基本』という小冊子をつくり組み立てラインの本格的な生産性向上活動が始まりました。

評論家はいらない。

構内の物流改善も同じです。評論家は放っておいて、本気で文句を言うメンバーを一人また一人とチームに加えていきました。「なぜ一癖あるような人物ばかり集めるのか」と聞かれた時、私は「本気で考えているから文句が出てくる。こういうメンバーの方が役に立つんだ」と答えました。

構内物流改革の一番の抵抗勢力は新開俊介工長一派でした。アイデアマンでしたが、私の提案にことごとく反対を唱えるので、この一派を味方につけようととことんやり合って一つ一つ具現化していきました。かんばんの振れ対策や構内物流の仕組みはこの時に実験したもの。今や彼らが世界中に広めてくれています。

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