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光洋精工(現ジェイテクト)の応援から戻り、課長に昇格した。

1984年に元町工場(愛知県豊田市)機械部第3機械課長を拝命しました。これで毎晩家に帰れる生活に戻れると喜んでいたところ、突然、大野耐一さんの講演のお供をせよと指示が下りました。

元町工場の当時の生産ライン

元町工場の当時の生産ライン

緊張して「センチュリー」の助手席に座ってお宅へ迎えにあがると、大野さんが乗り込まれて「林君、遠慮せんでいい。後ろへ座れ」。素直に大野さんの横に座りましたら「君、こんど課長になったそうだな」と声をかけてくださいました。

とっさに「はい、ありがとうございました」と応じたら、大野さんは「課長になるとありがたいかどうかワシにはわからんが、課長とは管理職だな。君は管理とは何と心得るか」。正に禅問答のような問い掛け。どう答えれば良いか分かりませんでしたが、答えないわけにはいきません。汗をかきながら思いつく事を色々申し上げました。

大野さんは黙って聞いておられましたが、おもむろに口を開かれ「君が言うような数値目標を与えてアウト、セーフ等と言うのは管理とは言わん。そう言う行為は日本語では『監視』と言うんだ。そういうくだらん事をせんでも皆が目標に向かって自発的に走るように仕組んでいく事が管理の本質だ。わかるか」。

思わず「わかりました」と答えたところ、大野さんは「今、何と言った。わかりました? ふざけたことを言うな。わかったかどうかは君の行動を見て私が判断する。わかったか」。すごい形相なので思わず「わかりました」と答えたところ、「まだわかっとらん」。もう答えようがありません。答えに窮して「やってみます」と答えたところ、「うん」とうなずき、やっと許していただきました。

工長さんに上に立つ者の心得を教わる。

第3機械課は総勢340人、工長は8人おりました。工長は現場の係長級でいわゆる現場の神様。私より皆年上です。いきなり大部隊の長になったわけです。

着任早々、古参の工長から話しかけられました。「課長が大野さんや鈴村喜久男さんの薫陶を受けたトヨタ生産方式のスペシャリストであるということは皆知っています。したがって課長の指示には皆従います」。しかし、それは条件付きで、「今から1カ月以内に340人の部下全員の顔と名前を覚えて10メートル位の距離からでも、『おい君』ではなく、『工長の島田君』と名前を呼べるようになってください」との注文でした。

私は毎日現場に出て一人一人に声をかけまくりました。1カ月後に島田工長のチェックを受け100点。逆に1カ月で部下全員が私の存在を認識してくれました。これはもう一つの大切な教えだったと、今でも感謝しています。

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