【Web講座】アントレプレヌールシップ論 ~MBA講義で知るビジネスの原理原則~

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2013/6/7  (3/5ページ)

(2)組織の問題

 意思決定者の多くは、過去に成功した人であり、既存事業での成功体験にとらわれる傾向が強いものです。時代の変化を巧みにとらえた新規事業について、本質的に理解できないことが多いのが現実です。

 また、意思決定が階層化していることが多く、決定に多くの時間がかかります。特に、社内調整に時間がかかり過ぎて、顧客ニーズのタイミングを逃してしまいがちです。

 さらに人事評価が売上高、利益の絶対額および増加率、EVAなど、一見、公平な指標を全部門に一律に適用するため、新規事業を積極的に推し進めようとするインセンティブが働きません。リスクをとって失敗したときの評価の低下をサポートするような人事制度もありません。

 また、新規事業を推進する社長や担当取締役などの任期が2年~4年であることも問題です。新規事業は波及効果が大きくて新規性の高い事業であればあるほど、本格的な収益貢献までには時間がかかります。しかし、当該新規事業を企画立案・推進していた社長や担当取締役が交代してしまうと、後任者は得てして前任者の否定をしたり、新規事業への思い入れや情熱がないため、単純な数値評価をして事業を中止してしまう傾向が強いものです。新規事業を推進する社長や担当取締役などの任期は、本当は長期間であることが望ましいのです。

 社内で積極的に商品化に取り組まない技術などについて、社内希望者がスピンオフベンチャー企業(または将来に大企業に戻ってくるカーブド・アウト・ベンチャー企業)を設立しやすい制度がないことも問題です。また、社外の独立ベンチャー企業と連携を強化して、外部にあるイノベーションの種を大企業が新規事業として気軽に取り込む制度(外部とのWin-Win関係の構築)が不足しています。

(3)新規事業担当者の問題

 担当者は大企業の従業員として雇用が保障されており、必死さが不足しています。起業家精神も足りません。新規事業ではしっかりとした組織が最初からないので、グループメンバーの「個人の能力」に依存する割合が高いものです。

 しかし、大企業で生活してきた人間は、「強烈な個性」や「強固なリーダーシップ」を持った人間を育成していくというカルチャーに乏しく、本来的に必要とされていることとミスマッチです。むしろ、これまでの大企業では「強烈な個性」を否定し、組織力で対応することを社員教育や人事評価で求めてきたことへの反動が出ているといえましょう。

 さらに大企業に所属しているという自尊心が未知な領域で展開する新規事業の推進を心理的に阻害していることもよく見受けられます。

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