【Web講座】職場とキャリアの心理学~MBA講義で知るビジネスの原理原則~

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2014/2/28  (2/6ページ)

カオス時代のキャリアを考える

 上記のことは、20代、30代と必死になって目の前の仕事をこなしているうちに、ややもすると社内で実績を上げ、評価を得ていくことだけが、自身の主体的なキャリア開発だと錯覚してしまうことがあることを表しています。同時に、社内で実績を上げ続ければ、社内で安定したキャリアを歩めるという前提を持つと、自分のライフ・プランはあたかも計画でき、予測できるという錯覚に陥ってしまうことも暗示しています。

 たしかに、「キャリアは提供されるもの」、「キャリアはすべて計画でき予測できるもの」という考えは、日本では戦後の高度経済成長期からバブル経済の崩壊前ごろまで続いた「右肩上がり」の経済成長の時代においては、必ずしも現実と乖離したキャリア観ではなかったといえるでしょう。この時代、社内での「縦」のキャリアを歩んでいくことが、個人もほぼ疑うことなく期待できたし、それを是とする社会全体の価値観も脈々と存在していたのです。

 しかし、日本の産業社会が成熟期を迎えると、社会は「カオス」の様相を強めていきます。カオス(chaos)とは、一般に「無秩序」や「混沌」と訳されますが、より正確には「一見すると無秩序にみえるような現象が、実際には背後に無数の秩序ある構造をもつもの」を意味します。

 つまり、線形予測ができない非連続的な環境下におかれたポストモダンの社会に私たちは生きているのです。わかりやすく言えば、過去の成功体験が単純に未来の予測に当てはまらない社会、中長期的な物事の予測がきわめて困難な社会の中で、私たちは生きているといえるでしょう。

 このような社会において、私たちは組織の階層を上方向に向かって縦のキャリアを形成していくことを一義的に追求していくことが現実的に困難になってきたのです。

 実は一足先に、80年代に産業構造の転換が進み、成熟期を迎えた米国の企業でも同じことが起こっていたのです。米国ボストン大学で組織行動学を教えるキャリア研究の第一人者の一人、ダグラス・ホール教授は、社会が成熟期を迎えると、企業と個人との関係に変化がみられることを指摘しています。具体的には、会社と個人との関係が、情緒的かつ長期的なものから、短期的な貢献と利益に基づくものへと変化してくるとしています。

 この社会の構造的な転換は、個人のキャリアに対する考え方にも変化を迫っています。すなわち、社内での昇進や給与上昇を重視する組織内キャリア志向から、自身が仕事においてどの程度主観的に成功感を経験できるかという自己志向的なキャリア志向へと変化せざるを得なくなります。

 この新しい時代におけるキャリアの考え方を、ダグラス・ホール教授は、「プロティアン・キャリア」もしくは「変幻自在なキャリア」と呼んでいます。では、この考え方を次ページで詳しく見てみましょう。

>> キャリア力を高める(その1)―「変幻自在なキャリア...

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