出世する人は人事評価を気にしない

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2015/2/10  (4/4ページ)

 50歳や55歳でも、そこから新しいキャリアを考えることはできる。しかし、選択肢が狭まることは事実だ。

 さらに、人事制度を前提とすれば、60歳が次の転機であることがわかる。ごく一部(大企業で10社に1社、中小企業で5社に1社)を除けば、60歳を定年としている会社が大半だからだ。

 とはいえ、無理に転職を選ぶ必要はない。人的資本の棚卸しをして、会社の中での昇進以外の選択肢を視野に入れることは転職ではなく、むしろ社内での働き方を変えるきっかけにもなるからだ。

 さらに、人的資本の棚卸しから始まるここまでの作業を終えると、逆に課長から部長への昇進を目指す道のりが見えることもある。

 例えば、製造部門の品質管理担当課長である人がいた。

 社内で出世するには、本社の品質管理部に戻り部長を目指すか、あるいは製造部門で工場長となり、製造部長を目指す選択肢しかない。でもそのためには現在の部長よりも深い知識と見識が必要で、それはとても難しいと漠然と考えていた。サイドビジネスでもしようか、と考えているころに、私の前著を読み、問い合わせのメールをくれた。私は彼に対して人的資本の棚卸しを指示してみた。

 その結果、彼は本社の品質管理部長に昇進できる可能性があることに気づいた。重要なことは知識や見識ではなく、品質管理部としての職務を果たすための、各部署とのつながりであることに気づいたのだ。

 そして、彼の同期たちが今や各部署で課長級として活躍していることを思い出した。

 今働いている工場の中だけで品質管理を徹底するのでなく、そこで得られた品質管理の標準化プロセスをもとに各部署への情報共有を進めることで、同期達とのつながりを深めることができるだろう。それは自分自身の強いつながりとなり、他の工場の品質管理担当課長よりも抜きんでるための具体的な行動になる。

 今の部長が持っているつながりは、彼自身が部長に選ばれるときには価値を生み出さないものになっているかもしれない、ということにも気づくことができた。

 次の世代の部長候補たちは、ちょうど彼の年代あたりになるからだ。

 今、彼が課長として築く強いつながりは、10年後に会社としての価値を生み出す強いつながりになり、それ自体が彼の人的資本となるのだから。

◇   ◇   ◇

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
人事コンサルタント

1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。著書に『7日で作る新・人事考課』『うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ』がある。

出世する人は人事評価を気にしない (日経プレミアシリーズ)

著者:平康 慶浩
出版:日本経済新聞出版社
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