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あなたの評価を左右する14の特性(2)

3.社内人脈づくりに執着していない

仕事をするうえで、社内の人脈が広いことはとてもよいことです。

たとえば「この件は誰に聞いたらわかるだろう?」という場面で、すぐに別の営業所に電話をして「俺の取引先の同業他社の会社をお前が担当していると思うけど、最近、業績どうなの?」と聞くことができたり、「経営会議に資料をつくって出したいんだけど、役員はどう思うかな?」となったら、秘書室に問い合わせてみたり。人脈があれば、いろいろなことを自分で直接聞くことができます。その点で、人脈が広いことはとても意味があります。

しかし、それが結果として「優秀さ」の物差しになるとは限りません。なぜでしょうか?

仕事を進める中で、必要なときに社内の人材を動かすことができるのは重要です。とはいえ、意味もなく「同期とよく飲んでいます」とアピールしたり、「社内の人間はだいたい知ってます」「この仕事は誰に聞けばいいのか、俺ならわかるよ」と自慢している人に、残念ながら「優秀な人」はほとんどいません。

人脈を持っていることは重要ですが、そこにかけるエネルギーを考えてみてください。「社内人脈が広い人」と思われるためにエネルギーを注ぐのと、そのエネルギーで仕事をするのと、どちらがいいのか。「優秀」を目指すのであれば、後者ですよね。外から本当に重要な仕事を持ってきて、社内の会議に通すことになったとき、たとえ自分に社内人脈がなかったとしても、社内人脈の広い人を知っていれば十分なのです。

社内人脈は広くても仕事ができない人と、社内人脈は狭いが仕事のできる人がいたとしたら、最後はどちらにつくべきか。答えは後者です。最後に評価されるのも後者の「優秀な社員」です。

大事なことは、仕事における「優秀さ」です。人脈以前に、仕事において秀でていることが前提です。仕事をスムーズに行うために、社内人脈を活用することはとても重要ですが、そこに対してむやみにエネルギーをかけすぎてしまうのは、時間がもったいないと言わざるを得ません。

また、私がさまざまな人に会ったうえで実感しているのは、本社にいて「役員をよく知っている」とか「社内の政治をよく知っている」「派閥にくわしい」という人は、経営陣から見ると「知りすぎた存在」と言えます。そういう人は、ある一定の役目が終わると、「将来のために地方の現場も見てくるといいんじゃないか」などと、どこかに飛ばされることになりがちです。

このように、社内人脈に精通しすぎてしまうと、時と場合によっては「面倒くさい」「疎(うと)ましい」「遠ざけたい」存在になる可能性も大なのです。

歴史を振り返ってみても、将軍や大名の下で知り尽くした存在は、殺されるケースが多いです。石田三成は豊臣秀吉が見出した「優秀」な人物でしたが、あまりにも豊臣政権の動かし方を知りすぎていた。彼は秀吉亡き後、天下取りにおいて対立相手だった徳川家康に殺されました。

知りすぎた人というのは、そういったリスクを背負っています。知らなくていいとは言いませんが、知りすぎていたり、知ることにエネルギーをかけすぎてしまうと、結果としてプラスにならないでしょう。

4.自分の能力をひけらかさない

市場価値が高すぎることの悩ましさ

転職する場合、気になるのは自分の市場価値です。市場価値というのは、一言で言うと「どれくらいの給料をもらえるか」ということ。大手の総合商社から別の業界に転職する際、「商社の経験からいうと、あなたの市場価値は1200万円です」となります。

市場価値が高いということは当然、当人にとってよいことだと思うかもしれません。しかし、「市場価値が高い」ことと「優秀」であることは、必ずしもイコールではありません。

留学経験があり、英語が堪能(たんのう)でMBAを持ってはいるけれど、現職が地方銀行の融資担当だったとします。「僕の市場価値は1800万円だけど、今は800万円の仕事をしている」という人を、周りはどう見るか。扱いづらい存在になるわけです。

会社には、仕事をするうえで必要とされる能力の幅があります。たとえば「私はスペイン語が堪能です」と言われても、「うちはアジアしか拠点がないんです」という会社においては、その語学における「優秀さ」にはあまり意味がありません。

「大学時代に日本で一番有名な物理の先生の下についていたので、それ関係なら誰にも負けません」というゼネコンの設計士がいたとしても、「それはともかく、まずは図面を書いてくれる?」となる。医学部を卒業した人が、「有名大学の勤務医になった場合、市場価値が2000万円」だとしても、実際には普通の事業会社で営業をやっていたとしたら?

このように、これまで培ってきた知識やノウハウが今やっている仕事と一致しない場合、それだけの市場価値があることがわかった時点で、周りからは「だとしたら、君はここにいないほうがいいんじゃない?」「居場所が違うでしょ」と思われてしまう。たとえその人が今いる場所で、仕事の能力を発揮していたとしても、周りの人間から見ると、「間違えてこの会社に来ちゃったんだ」「どうせ、そのうちいなくなるんでしょ?」と思われるだけ。そういう人は「優秀」とは呼ばれません。

「変わり者」でも、「人としてダメ」というわけでもありません。ただ、組織集団においては「集団の外にいる人」「異分子」という扱いになります。悲劇とまでは言いませんが、悩ましいことですね。

今いる土俵の中で戦おう

世の中の組織や会社では、同じ土俵の中で「優秀さ」が競われており、その中で頭ひとつ抜けた人が「優秀」と認定されます。その土俵の外側にいる人や、違うルールを持ち込む人がいると、日本の組織の中では「ここにいる人ではない」「我々とは違う」と思われてしまう。

会社で必要とされるのはたいてい、AランクからCランクまで。Aランクの中でも、頭ひとつ抜けていると「優秀」と言われます。ここにSランク、つまりスペシャリストが来たりすると、「そこまでの能力の人は、別にいらない」となります。

たとえば、チェーンの安居酒屋の場合。「僕は三ツ星シェフですが、ぜひ居酒屋でやってみたいんです」という人が転職してきたとします。しかし、周りは彼を「優秀」とは言いません。むしろ「いや、そもそもウチの店でやる人じゃないでしょ」となる。一方、その居酒屋チェーンの叩き上げの料理人で、社内のメニューコンクールで優勝した人は、「優秀」と言われます。

いくら「自分は三ツ星シェフですが、もともと和食が好きで、大きなチェーンでいろいろ勉強したいと思って来ました」と悪気なく言ったとしても、「わかったけど、君はここにいる人じゃないよね」と言われてしまう。それよりも、新卒で入社して以来ずっとその店で頑張ってきて、メニュー大会で斬新な料理を提案して何年か連続で優勝するような料理人を、人は「優秀」と呼ぶのです。

市場価値に見合った仕事をしていないという人に対して、その会社を「辞めろ」と言うわけではありません。ただ、今の会社で「優秀」でありたいと思うのならば、自分の社外における市場価値が実はとても高いということを、ひけらかすべきではありません。居心地が悪くなるだけです。

また、会社で「優秀」と言われる条件を飛び越えたスキルや能力を磨きすぎると、いつか会社から放り出される可能性もあるので要注意です。今いるマーケットで戦って「優秀」と言われるよう努力したほうが得策でしょう。

◇   ◇   ◇

高城幸司(たかぎ・こうじ)
経営コンサルタント。セレブレイン代表取締役。1964年東京生まれ。86年同志社大学卒業後、リクルートに入社。6年連続トップセールスに輝き、伝説の営業マンとして社内外から注目される。起業・独立の情報誌「アントレ」を創刊して編集長を務めたのち独立。現在は人事コンサルティング会社セレブレインをはじめ、2つの会社を経営する。著書に『仕事の9割は世間話』『無茶振りの技術』(日本経済新聞出版社)、『社内政治の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。

[この記事は2015年10月7日の日経Bizアカデミーに掲載したものです]

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