日経Bizアカデミー

日経Bizアカデミー開設記念スペシャルセミナー

SpecialSession グローバルリーダーに必要な資質とは

セミナーの様子  オープニングキーノートセッションに続き行われたのは、グロービス経営大学院経営研究科副研究科長の中村知哉氏によるスペシャルセッション。ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得、また総合商社や投資ファンドでの経験から、真のグローバルリーダーにとって欠かせない「英語力」「国際的視野」「コミュニケーション力」「ビジネス・フレームワーク」「コンセプチュアル・スキル」「ヒューマン・スキル」について、詳しく解説を行った。

講師 中村知哉氏

講師 中村知哉氏

グロービス経営大学院
経営研究科 副研究科長
一橋大学卒、ハーバード・ビジネススクール修了(MBA)。総合商社、投資ファンドなどを経て、現在はグロービス経営大学院英語プログラムの責任者。「日本・アジア企業のグローバル化戦略」「組織行動とリーダーシップ」などの科目を担当。

●グローバルリーダーに必要な6つの要素

 私は仕事の関係で、多くの日系企業のグローバル幹部研修を担当しています。最近の日系企業のグローバル化に関する変化は、企業が海外に人を派遣する際に「まずは英語力のある人材」を派遣しようという考えから、「英語力はそこそこでも、物流に詳しいとか、経理に詳しい人、マーケティングがよく分かっている人など、ビジネスを熟知している人」を派遣しようと変わってきたことです。今日は、多くの日系企業と取引をしている中から、グローバルリーダーに必要な要素についてお話いたします。

 まず、グローバルリーダーに必要な3つの要件をご説明します。まずは「英語力」です。現地に行って話すということが重要です。ただし我々の英語はファースト・ランゲージではないので、発音よりも話す内容、そして話す意思があるかどうかがポイントです。

 続いて「国際的視野」を持つこと。日常的に誰もがトライできることでいえば、日本経済新聞、特に国際面を読むことです。またウォール・ストリート・ジャーナルやフィナンシャルタイムズ、ニューズウイークなど、情報ソースの半分を海外メディアから取得する習慣をつけること。もちろん現地に赴くことも大事です。

 そして、異文化の人々と話す際には「コミュニケーション力」が重要です。まずは相手が話すことをよく聞き、価値観を理解し、認めること。そうすることで、実は日本についてじっくり考えるチャンスにもなります。海外で、現地の人以上にその国について語ることはなかなかできません。であれば、自分の国の歴史や宗教について、さらにはアジア全体について話ができるようになれば、みなさんの存在意義は上がると思います。禅のこと、世阿弥のこと、神道のこと。自国について何を聞かれてもスムーズに答えられるということこそ、実はグローバル化にとって重要なことなのです。

 次に、グローバル・国内を問わず、リーダーに必要な3つの要件をお話しします。囲碁や将棋、サッカーやドラクエ、それぞれに勝ち方があるように、ビジネスにおいても先人が作ってきた勝ち方があります。これを知っておくことで、圧倒的にビジネスの勝率は上がります。これが「ビジネス・フレームワーク」です。

 そして、物事の本質を把握する能力である「コンセプチュアル・スキル」。これは、議論をする中で磨かれていくものです。様々な体験の中から、何を抽出していけばいいのかを考えていくといいと思います。

 最後に、私が最も重要だと思っているのが「ヒューマン・スキル」です。事業をつくっていく際、一番大事なものはエネルギーです。「この人となら何かできるんじゃないか」「私も一緒にやってみたい」という、人を巻き込んで引っ張る力というのは、特にグローバル環境において、異文化の人と働く際、必要とされると思います。

講師 中村知哉氏

●志を醸成し、グローバルなリーダーへ

 グローバルリーダーに必要な要素である「英語力」「国際的視野」「コミュニケーション力」「ビジネス・フレームワーク」「コンセプチュアル・スキル」「ヒューマン・スキル」。しかし、これらは必要条件であり、決して十分条件ではありません。では、十分条件とは何か。それは「自律的な目標を持ち、とにかくやってみる」ということです。商品を売ってみて、その結果を客観視し、自問自答をする。常にPDCA(Plan Do Check Act)を繰り返すことです。初めは上司から言われた目標でも、自分自身の目標として動き始めたときに、小さな志は世界次元の大志へとつながり、グローバルリーダーへと成長していくのだと思います。成功者と呼ばれる人たちも、失敗の連続でした。そのもがき苦しむ中で自分なりの目標を見出し、それに向かうことで志は磨かれていくものなのです。

 私は、商社時代にハーバードに留学する機会をいただきました。当時財務を担当しており、社内では比較的優秀だと言われて留学したにも関わらず、ハーバードでは財務において全く通用しませんでした。そこで生き残る道を模索したとき、同級生の中で一番になれるものを考えてみたのですが、自分には学生時代に始めた合気道しかなかった。これをビジネスにどう結び付ければいいのかを考えていたときに、80年代に米国中西部州のBest CEOに選ばれた実務家教員から「合気道の氣の概念を経営に活かせ」という言葉をかけてもらったんです。そこで初めて自分の存在意義を見いだせました。

●パスが回ってくる人材に

 グローバルなシーンで最も辛いのは、球技に例えると「自分にパスが来ないこと」です。「こいつにボールを回せば、何かやってくれる」と相手に思わせる「何か」をつくらなければなりません。私の場合は、合気道で学んだ気配や呼吸、間を読む力が「ヒューマン・スキル」として評価され、パスが回ってくるようになりました。何でもいいのです。自分なりの「何か」を見つけてほしいと思います。

 また、キャリアの扉は偶然性によって大きく開かれることがあります。人生の中にはチャンスが多く転がっています。そのチャンスに踏み込んでいけるかどうかが重要です。そして、一見脈絡のないところに意味を見いだせるか、が大きな鍵になると思います。

 みなさんに申し上げたいのは、

  • 好きなことを見つけよう
  • 練習をしよう
  • 直感を信じよう
  • できれば辛い方の道を選ぼう(少なくとも力がつく)
  • 良い稽古相手(先輩、客、取引相手)に巡り合えたら、思い切り勝負をしよう
  • 苦しい局面を乗り越えるために、家族や恋人、友人を大切にしよう
  • 市場の評価に触れるようにしよう(ビジネススクールに通うのはこの点では有効です)
  • 運をつかむために、こっそりと人や社会にとって良いことをしよう(陰徳を積もう)

ということです。そして、これらすべてに結節するのが、やはり「ヒューマン・スキル」です。人間を磨くのは容易なことではありませんが、経営は毎期通信簿をくれる人間育成道場だと思います。みなさんは、経営を志す過程を通じて、どうぞ、良いグローバルリーダーになってほしいと思います。

Closing session

ネットワーキング・パーティーの様子

 セミナーを締めくくる「クロージングセッション~次世代のリーダーたちへ」では、日本経済新聞社執行役員デジタル営業局長、酒井綱一郎氏が2時間半に及んだセミナーを「実は非常に難しいテーマだった」と振り返った。しかし、山崎氏の「グローバルは結果」、高島氏の「問題を楽しんで解く」、南氏の「分からないことを解決するプロセスが面白い」、そして中村氏の「まずは自国を理解し、相手を理解するコミュニケーション力」という言葉が論点を明確化し、リーダーに求められるポイントをわかりやすく明示してくれた、と酒井氏は話した。「とにかくやってみることが大事」という講師陣からのメッセージを「Think Global, Act Local」「Just Do It」という英語の言葉でまとめ、セミナーは終了した。
 その後のネットワーキング・パーティーでは、多くの参加者が講師陣を取り囲み、熱心に質問を投げかける光景が繰り広げられた。
 パネリストの一人である山崎氏は「手帳には、その仕事の内容だけでなく具体的な作業時間を書くと効率的」といった自身のテクニックを披露。また「遊ぶよりもマーケティングの勉強の方が楽しい」と話す大学生に対し、南氏が「今しかできない楽しみを体験しておくことも大事。もっと遊びなさい!」と助言する一幕もあった。
 参加者からは「いずれ大きな舞台で働きたいと思っているので参加した。講師だけでなく、周りの参加者からも刺激を受けた」「ドメスティックな会社にいるが、一ビジネスパーソンとして大事なことに気づかされた」などという声が聞かれた。パーティ終了まで、会場はアグレッシブな雰囲気に包まれていた。

■協賛パートナー(50音順)
グロービス経営大学院 日本コカ・コーラ ビズリーチ

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